相続した空き家を解体して土地を有効活用したい、近隣住民に迷惑を掛けてしまうので古家を取り壊して更地にしたいなどと考えている方は決して少なくないと思います。
その際、家の解体費用はどれくらいかかるのか?解体費用を安くする方法はないか?と気になっている方も多いことでしょう。
本記事では、解体工事の費用を安くする方法、資金の調達方法、節約する方法、良い解体業者の見分け方を詳しく紹介します。
目次
解体費用は、建物の構造や広さ(延べ床面積)、階数、地階の有無の他に、立地条件や周辺環境によってほぼ決まります。
簡単に言うと、郊外の広い土地に建つ木造住宅などの比較的壊しやすい構造の建物は安く、都心の狭小地に建つ3階建の鉄筋コンクリート造の建物の解体費は高くなります。
費用は主に作業員の人件費になるので、作業のしやすさが解体費用に影響すると考えて良いでしょう。
一般的な家屋の解体工事の流れは次の通りです。
見積もり書の作成の際は立ち会いによる現地調査を行い、現地で建物の状態や近隣住戸の状況、周辺道路の状況などを調査します。
その際には、建物内部の残置物の有無や門扉や塀、植栽などの解体の有無を併せて調査し、追加費用の有無を判断します。
現地調査に立ち会う際のチェックポイントについては、以下の記事を参考にしてください。
現地調査の結果をもとに、解体業者から見積もり書が提出されます。内容を確認した上で、特に問題がないようであれば業者側と契約を行います。
工事開始の7日前までに、建設リサイクル法の届出を行います。原則80㎡以上の建物の解体工事を行う際には必要な届出で、ほとんどの家屋が該当します。
また、解体工事の際に周辺道路を使う可能性がある場合は、警察署に道路使用許可申請を事前に申請しておきます。
解体工事中には、騒音や振動、粉じんの発生や工事車両の駐車などで近隣住民に迷惑を掛ける可能性があるため、工事開始の1週間前を目安に近隣への挨拶を行います。
その際にはできるだけ施主も解体業者と一緒に挨拶しておくと良いでしょう。
近隣挨拶の際のマナーや注意したいポイントなどは、以下の記事で紹介しています。
解体工事前には、電気、ガス、水道などのライフラインの停止の手配を行います。
しかし水道については工事中に散水用として使用することが多いので、停止の時期については事前に解体業者と打ち合わせをしておくようにしましょう。
また、有線やケーブルTV、浄化槽などがある場合には、事前に担当窓口に連絡して必要な処置を行います。
解体する建物の周囲に足場を組み、養生シートを張って工事中の騒音やほこりの発生を防ぎます。
屋根材、畳、サッシ、建具、住宅設備機器、石膏ボード、断熱材などを撤去します。
小屋組、柱、梁、床組、土台などの建物の骨組みを解体し、最後に基礎を掘り起こして撤去します。
また、地中埋設物の有無も併せて確認します。地中埋設物が発見された場合は、工期が延びたり追加費用が請求されたりする可能性があります。
解体した廃材を順次分別して搬出します。
解体工事では廃材ごとの分別回収が義務づけられているため、廃材の分別はとても大切な作業となります。
建物の解体終了後に敷地を平らにならして整地します。
おおむね上記のような流れになりますが、足場の組み立てから整地までで7日~10日間程度になるのが一般的です。
他に門扉や塀、カーポート、植栽等の撤去が必要な場合には、更に2日程かかります。
これらの撤去は建物の解体前に行う場合と最後に行う場合があり、現場の状況によってケースバイケースです。
基本的な解体費用の内訳は、「仮設工事費(養生費)」「人件費・重機使用料」「廃材処分費」「各種申請費」「諸経費」から構成されています。
それぞれについて詳しくご紹介します。
解体工事では、工事中に騒音や粉じんの発生、工事車両の駐車などで近隣住民に迷惑を掛けることになります。
また、現場の状況によっては仮設トイレや仮設水道・電気などが必要になることもあります。
これらのことに対応するために足場や養生シートで建物を覆い、仮設設備などを準備するための費用がかかります。
家屋の取り壊し作業を行う際には重機を使用するのが一般的で、重機を運転するオペレーターの人件費がかかります。
また、その他にも現場作業を行う作業員や廃棄物を運搬する人の人件費などが取り壊し費用として計上されます。
取り壊し費用は、解体費用総額の約4割程度を占めることが多いようです。
家屋の解体工事で発生した大量の廃棄物は、建設リサイクル法によってその種類ごとに分別して処分することが定められており、それぞれに廃棄費用がかかります。
廃棄物の処理費用は解体費用全体の中の約4~5割と、大きな割合を占めます。
解体工事終了後には敷地を平らにならし、整地作業を行います。一般的には解体費用全体の1割程度を見込んでおくと良いでしょう。
解体工事では、建設リサイクル法の申請や建築物除却届、建物滅失登記申請などの他に、必要に応じて警察署への道路使用許可申請やアスベスト除去の届出などの届出が必要になります。
業者に依頼する場合には手数料がかかりますが、申請は自分で行うことも可能です。
解体工事では上記の申請手数料の他に、解体工事着工前の近隣挨拶や工事賠償保険、工事車両の駐車料金などの必要な料金が諸経費として計上されます。
家屋の解体工事と同時に門扉や塀、カーポート、植栽、地中埋設物などの撤去が必要な場合には、付帯工事費用として計上されます。
付帯工事費用は解体費用全体の3割程度かかってしまうこともあるので、事前にどのような工事が必要になるのかをよく確認しておくことが大切です。
建物の解体費用は、建物の構造や建坪(延べ床面積)によって大きく変わります。
解体費用は建物が丈夫になるほど取り壊すのに手間がかかるので、一般的には木造<鉄骨造<鉄筋コンクリート造(RC造)となります。
1坪あたりの解体費用相場(坪単価)はおおむね次のようになります。
建物の構造 | 坪単価 |
木造 | 3.0~4.5万円/坪 |
鉄骨造 | 3.5~6.0万円/坪 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 4.0~7.0万円/坪 |
なお、アパートの場合であっても基本的な壊し方は戸建て住宅と変わらず、建物構造の違いによる坪単価の違いがそのまま該当すると考えても良いでしょう。
また、アパートは2階建てや総3階建てになっていることが多く、同じ床面積であっても解体の手間がかかる屋根や基礎の面積が少なくなるという特徴があります。
ただしキッチンやユニットバス、トイレなどの住宅設備機器などが戸建住宅よりも増えるので、解体業者によってはアパートの方が戸建住宅よりも解体費用が高くなることもあるようです。
木造の建坪別解体費用相場は次のようになります。
建坪30坪 | 90万円~135万円 |
建坪50坪 | 150万円~225万円 |
次に鉄骨造の建坪別解体費用相場は次のようになります。
建坪30坪 | 105万円~180万円 |
建坪50坪 | 175万円~300万円 |
鉄筋コンクリート造(RC造)の建坪別解体費用相場は次のようになります。
建坪30坪 | 120万円~210万円 |
建坪50坪 | 200万円~350万円 |
解体工事ではたとえ同じ構造、同じ面積の建物であっても、解体費用に大きな価格差が生じてしまうことがあります。
解体費用は、工事にかかる手間や廃棄物の種類や量によって大きく左右されます。
そのため、建物が壊しにくい現場環境や残置物の量、アスベスト建材使用の有無等によって解体費用が変わるので、費用が変動するポイントをしっかりと押さえておくことが大切です。
建物の解体費用の多くは人件費が占めているので、それぞれの建物の壊しやすさが大きく影響します。
同じ構造、同じ面積の家であっても、地方の広い敷地に建つ家屋の方が都心の住宅密集地に建つ家屋よりも容易に解体できることが一般の方にも想像できると思います。
解体費用に影響する現場の状況には、以下のようなものがあります。
解体する建物が閑静な住宅街にある場合には、騒音規制法により一日の作業時間などが規制されていることがあるため、解体費用が割高になって工期も長くなる傾向があります。
現場が狭小敷地や住宅密集地にある場合には重機が使用できず、手作業で解体することになります。
そのため、作業方法にさまざまな制約を受けることになり、解体費用が割高になります。
隣家が近接している場合には解体工事中にひび割れ等の被害を与える危険性が高くなり、その部分の解体作業は手作業で丁寧に行う必要があるため、手間がかかってしまいます。
また状況により、解体前に隣家の建物調査を行っておく必要が生じます。その際は調査費用が余分にかかってしまうため、費用が割高になります。
周辺道路が狭い場合には、小型トラックでこまめに廃材を搬出したり警察への道路使用許可申請や誘導員が必要になるので、工事費が割高になります。
敷地と前面道路との間に大きな高低差がある場合には敷地内に重機が搬入できないため、手作業で解体することになります。
また、廃材の積み込み作業にも手間がかかるため、費用が割高になります。
解体費用に影響を及ぼすのは現場の状況ばかりではなく、さまざまな要因があります。
アスベストは発がん性物質を含むため現在は使用が禁止されていますが、1975年以前に建てられた建物には、危険度が高いアスベストが使われている可能性が高いといえます。
特に飛散性アスベストには注意が必要で、解体時には適切な飛散防止対策を講じることが法律で義務付けられています。
アスベスト含有検査や除去工事には別途費用がかかるため、アスベスト使用が懸念される場合には事前にアスベスト使用の有無を調査しておくことが大切です。
過去の土地の使用履歴次第では、地面の中に地中埋設物が残っていることがあります。
地中埋設物の例には昔の建物の地下部分のコンクリートなどがあり、それを除去するためには高額な除去費用がかかります。
地中埋設物は新築時に発見されることが多く、将来土地を売却する際にはトラブルの原因になります。
そのため、できる限り撤去しておく必要がありますが、予想外の費用負担となってしまいがちです。
解体工事は12月~3月が業者の繁忙期といわれていて、この時期に依頼すると解体工事費用が割高になってしまうことがあります。
そのため、解体工事をどうしてもこの時期に行う必要があるのでなければ、できるだけ繁忙期を避けるのが得策といえます。
解体工事は、依頼先によっても大きく費用が異なります。
特にハウスメーカーや工務店等に依頼した場合、実際に作業を行うのは下請けの解体業者になるため、工事費の20~30%程度の中間マージンが発生してしまうのが一般的です。
また、解体業者の中にも重機や足場材などを自社で所有しているケースやレンタルしているケースがあり、レンタルしている場合にはリース代が解体費用に上乗せされます。
このように、解体工事の依頼先によっても大きな価格差が生じることを覚えておきましょう。
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事前に解体業者に現地を見せた上で見積もり書を提出してもらった場合には、追加料金がかかることはほとんどありません。
しかし中には追加請求の対象となりやすい項目があります。
解体業者が現地調査する際には室内に残された残置物の量を確認し、その処理方法をあらかじめ依頼主と打ち合わせた上で見積もり書を作成するのが一般的です。
しかし打ち合わせ通りでなかった場合には、余分に発生した残置物処理に対して追加料金がかかってしまいます。
解体工事を進めていく中で、建物の下で想定外の地中埋設物が発見された場合には、追加工事費用が発生します。
解体業者は基本的に地中埋設物がないものとして見積もり書を作成するので、あらかじめ地中埋設物の存在を知っている場合には事前にきちんと業者に伝えておくことが大切です。
解体工事中に近隣住民からクレームが入り、やむを得ず工事をストップしなければならなくなることがあります。
この際、解体業者に特に過失がなければ工事が延長した分の費用を請求されることがあります。
こうした事態をできるだけ避けるためにも、工事着工前の近隣挨拶をしっかりと行っておくことが大切です。
上記は代表的な追加料金が発生する事例ですが、中には事前に追加工事に関する説明がなく、いきなり高額な追加工事を請求してくる業者もいます。
見積もり書の提出時や契約締結時に、追加工事発生の可能性の有無や追加工事の発生条件などの説明を受け、契約書にきちんと記載しておいてもらうことをおすすめします。
解体工事費用を少しでも安く抑えるためには、さまざまな方法があります。
この章では、解体費用を安くする方法をご紹介します。
家の中の建物所有者が残したゴミ(残置物)の処分を解体業者に任せると、想定外の高額な処分費用がかかってしまうことがあります。
そのため、自分で処分できるゴミや不用品はできるだけ自分で処分することをおすすめします。
家庭ごみとして処分する、粗大ごみに出す、リサイクルショップに引き取ってもらう、フリマアプリを利用して販売するなどといった方法で、残置物処分費用を節約しましょう。
老朽化した家屋や倒壊の恐れがある危険な家屋については、各市町村の補助金・助成金制度を利用して解体工事費用の一部を補助してもらえる場合があります。
自治体ごとに要件や補助金の額が異なりますが、それぞれの市町村の補助金情報をホームページや自治体の窓口などで確認してみると良いでしょう。
解体業者の中には、解体工事に必要な許可(建設業の許可や都道府県知事への解体工事業登録)を持っていなかったり、不法投棄を行っていたりする業者がまれに存在しています。
こうした業者に依頼してトラブルにならないようにするためには、適切な費用相場で工事を請け負っている業者に依頼することが大切です。
また、費用を値引きする際にも正当な理由で値引きを行なっている業者に依頼する必要があります。
では、解体費を安くできる正当な理由とはどのようなものなのでしょうか。
解体業者の中には、自社で施工せずに工事を下請け業者に流して中間マージンをとっている業者が存在しています。
そのため、解体費用を安く抑えるためには、工事の自社施工が外すことのできない条件のひとつです。
解体業者が自社で重機や足場材などを所有しているかどうかも、工事を安く発注することに関わってきます。
自社で保有していない業者に依頼した場合には、これらのリース代を含んだ金額を請求される可能性が高く、コストが高くなる原因のひとつになります。
産業廃棄物は、産業廃棄物を出した解体業者が適切な処理を行えない場合には処理を他社に委託しなくてはなりません。
外部の処理業者に委託すると当然費用がかかり、その費用は解体費用に上乗せされることになります。
家屋の解体工事を行いたくても解体費用の資金がない場合には、金融機関のローンを検討してみましょう。
家屋の解体資金に利用できるローンには、空き家解体ローンや銀行のフリーローンがあります。
空き家解体ローンはほとんどが担保や保証人が不要で、手頃な金利で利用することができます。
一方、フリーローンは資金使途を証明する書類の提出が原則不要なので、簡便な手続きで融資を受けられるのがメリットです。
資金がない場合の対処法については、以下の記事を参考にしてください。
解体工事にはさまざまなトラブルが発生するリスクがあり、その責任は工事の発注者に及ぶこともあります。
そのようなトラブルを避けるためには信頼できる業者を探すことが不可欠ですが、解体業者の中にはいまだに悪質な業者も存在しています。
そこでこの章では、悪徳業者を見極める方法を紹介します。
業者が解体工事を行うためには、建設業許可か解体工事業登録のいずれかが必要になります。
建設業許可を保有していれば請負金額の制限はなく、全国どこででも工事を請け負うことが可能です。
一方、解体工事業登録を行っていれば、登録した都道府県内で税込500万円未満の工事に限り請け負うことができます。
解体工事を依頼する際は、これらの許可の有無を必ず確認しておくようにしましょう。
解体業者のホームページで許可番号や登録番号を確認する、業者の担当者に許可証のコピーを見せてもらう、市役所などで「解体工事業者登録名簿」などの方法で確認することができます。
解体工事中にはどんなに注意して作業を行っていても、事故や破損による損害が発生する可能性がゼロではありません。
このような万が一の事態に備えて工事保険があるのですが、解体業者が保険に加入するためには厳しい審査があります。
そのため、保険に加入している業者は厳しい審査をクリアした優良業者といえます。
解体業者に工事を発注する際には、必ず保険加入の有無を確認しておくようにしましょう。可能であれば保険証券のコピーを提示してもらっておくと安心です。
良い解体業者とそうでない解体業者を見分けるためには、見積書の内容をしっかりと確認することが一番の近道です。
見積書に記載された項目がいかに明確で細かくなっているかどうかで、追加料金発生のリスクを防ぐことができます。
また、不明な点や疑問点などの質問に対してわかりやすく説明してくれるようであれば、信頼できる業者といって良いでしょう。
反対に見積書が「○○工事一式 ○○円」などのように一式で記載されている場合には、注意が必要です。
解体工事では、廃材の不法投棄が頻繁に発生しています。
資格を持った解体業者であれば不法投棄される可能性は極めて低いといえますが、念のため廃棄物の処理方法についても確認しておきましょう。
廃棄物の処分方法について明確に説明できるようであればとりあえず安心です。
最終的には担当者の人柄や対応をしっかりと見極めましょう。
教育が行き届いていない業者の担当者は基本的なマナーを守れないばかりか、言動に一貫性がない傾向があります。
そのような業者に依頼した場合は工事中に近隣とのトラブルを引き起こす恐れがあるので、避けた方が無難でしょう。
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解体工事を安くするためには、やはり相応の手間をかけることが必要になります。
お金を節約する分、自分で行うべきことが増えてしまいますが、それなりの成果が必ず期待できます。
ぜひ本記事を参考にして、後悔のない解体工事をしましょう。
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