解体費用は年々値上がりを続け今後も下がることはないといわれていますが、それは本当のことなのでしょうか。
老朽化して解体が必要になった空き家や誰も住んでいない古家の所有者にとって、家の解体費用の値上がりは非常に大きな問題といえます。
そこで本記事では、家の解体費用の値上がりの主な要因と解体費用の値上がりに対する対策について紹介します。
目次
解体工事費用は今後しばらくの間値上がりすることはあっても、下がることはないといわれています。
最も大きな要因は数年前に比べ約2倍に値上がりしたといわれている廃棄物処分費用ですが、廃棄物処分費用の高騰以外にも、解体費用の値上がりには複数の要因があります。
そこで、解体費用が値上がりしている背景を詳しく紹介します。
2017年7月に海外の廃棄物を原材料として輸入していた中国政府が、世界貿易機関に対して廃棄物輸入を段階的に停止する旨を通告しました。
それによって国内の解体工事で発生する廃プラスチックや古紙、木材チップといった資源ごみが行き場を失いつつあります。
そして行き場を失った資源ごみは、結局国内で処分せざるを得なくなります。
その結果受け入れ先がパンクして、廃棄物の処分費が数年前と比べ約2倍に高騰したといわれています。
それまでは輸出によりある程度のコストを回収できたため解体費用を抑えることができました。
しかし、今後は資源ごみの処分にかかるコストがそのまま解体費用に上乗せされることになります。
処分費用高騰の背景には、2015年に制定された「空き家対策特別措置法」の影響があります。
また、近年多発している自然災害による廃材の処分、行き場を失った資源ごみの処分などで国内の最終処分場のキャパが逼迫しています。
最終処分場を新たに増やそうとするにも近隣住民からの反対が多く、なかなか実現できないのが現状です。
最終処分場が不足していると処分場の前には廃棄物を積んだダンプの列ができ、受け入れ制限などが行われるようになります。
近年では2時間待ち、3時間待ちなども決して珍しくなく、廃棄処分の作業効率が低下するのは明白です。
また、埋め立て処分価格も値上がりする傾向にあります。こうした事情から、産業廃棄物の処分費自体が高騰しているといえるでしょう。
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解体費用の高騰の原因のひとつに、人手不足があります。
慢性的な人手不足解消は以前からの課題でしたが、それに加えて働き方改革により労働条件の改善が求められており、ますますハードルが高くなっています。
また、外国人実習生の活用もほとんど進んでいません。
解体工事業者はもともと少人数の経営であるため経営者の業務内容は多岐にわたり、人手不足解消のための施策が進みにくくなっていることがほとんどです。
そのため、人材を確保するためには人件費が高騰してしまう傾向があります。
産業廃棄物とは、事業活動に伴って発生した廃棄物のうち、廃棄物処理法で規定された20種類の廃棄物のことをいいます。
具体的には燃え殻や汚泥、廃油、廃プラスチック類やその他の政令で定める廃棄物のことをいいます。
その他、解体工事を通して発生した廃棄物は一般的に産業廃棄物として取り扱われます。
たとえ紙や布類などの一般ごみに出せるようなものであっても、解体業者が処理することで産業廃棄物の扱いになるので注意が必要です。
産業廃棄物は排出事業者が適切に処理する必要があり、万一森林や地中などに廃棄してしまうと不法投棄と見なされて罰則が科されることになっています。
また、解体業者は建設リサイクル法で定められた規定に基づき、分別解体等及び再資源化等を行うことが義務付けられています。
そのため、産業廃棄物の処理費用が上がれば必然的に解体費用は値上がりせざるを得なくなります。
解体工事では木くず、金属くず、コンクリートガラ、プラスチック、ガラスなどの廃棄物ごとに分別しながら解体していきます。
これらの廃材はダンプカーなどに積み込まれ、産業廃棄物中間処分場または産業廃棄物最終処分場に運ばれます。
中間処分場では廃棄物の種類に応じて焼却、破砕・選別、圧縮・成形、脱水などが施されて廃棄物の安定化、無害化、資源化が行われます。
一方最終処分場では、廃棄物の埋め立て処分や海洋投入によって最終的な処分が行われています。
解体工事ではさまざまな廃棄物が発生しますが、その処理費用は市区町村によって異なります。
また、解体業者や廃棄物処理業者によっても多少の差が生じますが、主な廃棄物のおおよその処理費用の目安は以下の通りです。
木くず | 14,000円/トン |
金属くず | 3,500円/トン |
コンクリートガラ | 1,500円/トン |
アスファルト | 1,300円/トン |
廃プラスチック | 56,000円/トン |
ガラス | 7,500円/トン |
解体工事費用は現在値上がりしている傾向にありますが、今後も値上がりが続くものと思われます。
前述したように、国内の最終処分場不足のほか、現在解体現場で働いている職人の人手不足や高齢化が深刻な問題になりつつあります。
しかし解体現場においては、廃棄物の分別作業が煩雑過ぎて手作業に頼らざるを得ないのが現状です。
このまま職人不足が続けば解体工事の低効率化が進み、解体費用が値上がりするのは避けられないでしょう。
そのため、現時点では今後解体費用が安くなる要因はほとんど見当たらないといえます。
今後高騰していくことが予想される家屋の解体工事費用ですが、2015年に制定された「空き家対策特別措置法」の影響もあり、解体工事の需要も増えていくことが予想されます。
そこで早めに解体費用の値上がりに対する対策を講じておくことが大切です。
この章では、解体費用の値上がりに対する対策をいくつか紹介します。
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家屋の解体工事を行う予定がある場合には、工事費用が高騰しないうちにできるだけ早めに解体して更地にしてしまいましょう。
また、将来も使用する予定のない老朽化した家をお持ちの方は、この機会に解体してしまった方が得策でしょう。
いつかは必ず解体工事を行う必要性が生じるので、早めに手を打っておくことをおすすめします。
解体するべきかどうかを悩んでいる建物を所有している場合も不動産業者などの専門家になるべく早く相談して、何らかの対策を講じましょう。
解体業者の中には、廃棄物を自社で運搬して自社処分を行なっている業者もいます。
このような場合、全品目を自社処分していれば何か問題が発生した場合にも責任の所在が明らかなので、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の発行義務もないことになっています。
全てを自社で行うため、中間マージンも発生しません。
また、外部委託している業者よりも費用が抑えられる傾向があるため、こうした業者に発注することで解体工事費用のコストダウンに繋がります。
自社施工かを調べる方法としては、役所に処分施設の設置届が提出されているかどうかを確認することで廃棄物処分を自社で行っている業者かどうかを判断することができます。
解体費用を削減するためには廃棄物の分別をしっかりと行い、混合廃棄物を極力減らすことが一番の近道になります。
木くず、金属くず、廃プラスチック、ガラス、コンクリート、紙くずなどをきちんと分別して搬出することが重要です。
このような廃棄物の分別をしっかりと行うことが出来る解体業者に依頼すれば、廃棄物処分費用を削減することができます。
また、室内にある日用品や雑貨、家具、家電、本など一般ごみや粗大ごみとして自分で処分できるものは自分で処分することで、解体費用の削減が可能になります。
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解体工事をはじめとする建築工事の見積もり書には有効期限が記載されていることが多いです。
しかし、その見積もり書の有効期限は法律で記載することが義務付けられている訳ではありません。
見積り書に有効期限を記載する目的は、顧客に早めの発注を促すことや価格変動に対応することなどがあります。
そのため、見積り書の有効期限を1~3か月程度の短い期間に設定している業者が増えているので注意してください。
なお、有効期限が過ぎてしまった場合には、民法第521条にてその見積もり書が無効になることが定められています。
ここまで紹介してきたように、今後も家屋の解体工事費が値上がりすることが予想されます。その最大の要因は廃棄物処分費の高騰です。
そうした中にあって、解体工事の見積りが相場よりも極端に安い業者には注意が必要です。
見積り金額が安い業者や大幅な値引きを行う業者の中には、適正な廃棄物処分を行わずに不法投棄などの違法行為を行っている可能性があります。
廃棄物処分費用が高騰しているからといって不法投棄を行うことは絶対にNGです。
こうしたことを避けるためにも複数の業者から相見積りを取って、廃棄物処分費用が安すぎないかどうかを必ずチェックしておくことが大切です。
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解体工事費用は今後しばらくの間値上がりすることはあっても、下がることはないと思われます。
中国の「資源ごみ」の輸入禁止などによる産業廃棄物の処分費用の高騰、解体職人の人手不足による人件費の高騰などが値上がりの原因となっているためです。
一方、解体工事の需要は今後益々増えていくと思われるので、家屋の解体工事を検討している方は早めに何らかの対策を打っておくことが大切です。
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