家屋を解体する際には、解体工事前後にさまざまな届け出を自治体等に提出する必要がなります。
ほとんどの届け出は解体業者に代行を依頼することができますが、依頼主としてそうした一連の流れを知らずにいると後で不都合が生じてしまうことにもなりかねません。
そこで本記事では、解体工事契約後の各種届け出や手続きの申請方法について紹介します。
目次
家屋の解体工事を行う際には、まずは解体業者を決めて業者と契約書を取り交わします。
しかし解体業者は契約したからといって、すぐに工事に着手できるわけではありません。
特に評判が良く人気のある解体業者であるほど直近のスケジュールが埋まっている可能性が高く、また工事に着手する前の準備や届け出等にも時間がかかる場合があります。
そこでまずは、解体工事を契約する時期の目安や、契約前に確認しておくべきこと、解体工事手続きなどについて紹介します。
解体業者の選び方については、以下の記事で詳しく解説をしています。
解体工事を行う際には複数の業者から見積もりを取得して、価格やそれぞれの内容をよく比較検討した上で選定した業者と契約書を取り交わすことが大切です。
契約日の目安はさまざまな事情を考慮に入れると、着工希望日の2~3か月前がベストと考えておくと良いでしょう。
したがってそれよりもさらに1か月程度前までには、複数の解体業者に見積もり依頼をしておくことが必要になります。
家屋の解体工事を行う際には、解体する建物の広さや構造に応じた各種届け出が必要になります。
届け出のほとんどは解体業者に代行してもらえますが、中には罰金が科されるものもあるので注意が必要です。
なお、解体工事の際に必要な届け出には主に以下のようなものがあります。
上記はすべてのケースで必要になるとは限りませんが、自分の場合にはどのような届け出が必要になるのかを事前によく確認しておくことが大切です。
また、建物滅失登記については第三者(土地家屋調査士)に委任すると3~7万円程度の費用が発生するため、自分で行うことで費用を節約できます。ただし申請期限があるので十分に注意が必要です。
解体工事に着手する前と工事終了後には複数の届け出を行う必要がありますが、その申請義務の多くは施主(発注者)にあります。
そして申請は解体業者等に委任することも可能ですが、その場合には費用がかかることが多いので、どんな届け出が必要になるのかをあらかじめ知っておくことが大切です。
そこでこの章では、施主が申請義務者となる届け出を5つ紹介します。
2006年以前に建てられた建物には、人体に有害なアスベストを含む建材が使用されている可能性があります。
そして解体作業中に空中に飛散したアスベストを長期間大量に吸入すると、肺がんや中皮腫などの健康被害を引き起こす恐れがあることが知られています。
そこで建築当時の設計図書や解体工事前の現地調査などでアスベストが使用されていることが確認された場合には、解体工事に着手する前に「特定粉じん排出等作業実施届」を提出することが法律で定められています。
届け出は解体業者に代行して行ってもらうのが一般的ですが、届け出を怠った場合には発注者(施主)に3か月以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金が科せられるので注意が必要です。
「特定粉じん排出等作業実施届」は、作業開始の14日前までに各都道府県が定める窓口に提出することになっています。
尚、その際には現場付近の地図、建築物の配置図、作業工程表、施行区画の隔離方法、使用する機器・設備などを記載した書類の添付が必要になります。
そして解体業者に代行してもらって届け出る場合には、他に必要な申請と併せて3~5万円程度の費用がかかるのが一般的です。
家屋の解体工事では、解体した際に発生する廃棄物を適正な方法で処理・処分しなければなりません。
そして解体する建物の床面積の合計が80㎡以上になる場合には、建設リサイクル法に基づく届け出が必要になります。
届け出の義務は施主(発注者)にあるので、たとえ解体業者が届け出を怠ったとしても、発注者に20万円以下の罰金刑が科せられてしまうので注意が必要です。
届け出が必要になる工事の発注者は、工事開始の7日前までに工事内容などを記載した書面を、施工場所を管轄する市区町村の担当窓口に提出しなければなりません。(提出先は都道府県知事となります)
尚、提出すべき書面には、届出表、付近見取り図、分別解体等の計画表、工程表、建築物全体がわかる写真などがあります。
そして業者に代行してもらって届け出る場合には、2~3万円程度の費用がかかります。
建築基準法第15条の規定により、一般的な家屋を解体したり除去したりする場合には、事前に「建築物除去届」を提出する必要があります。
ただし建築物の床面積が10㎡以内の場合や、建て替えにともなう除去工事の場合には必要ありません。
万一届け出を行わずに解体工事に着手した場合には、50万円以下の罰金が科されてしまうので、要注意です。
「建築物除去届」は、解体工事を行う前日までに建物を管轄する特定行政庁の確認申請窓口で届け出を行います。
届出書面は第一面と第二面の2ページ構成になっていることが多い様ですが、都道府県によって多少の違いがあるようです。
また届け出は委任状をもって解体業者に委任することが可能ですが、その場合には他の申請などを含めて3~5万円程度の手数料がかかるのが一般的です。
建物を解体した後には、不動産登記法によって建物滅失登記を行うことが定められています。
建物滅失登記とは、法務局の登記簿から建物がなくなったことを登記するものです。
これを怠った場合には10万円以下の過料に処される場合があるほか、解体した建物に固定資産税がかかり続ける、土地の売却ができない、建築確認申請が下りずに建て替えができなくなるなどのデメリットが生じてしまいます。
「建物滅失登記」は、解体工事終了後1か月以内に建物を管轄する法務局で行わなければなりません。
その際には建物滅失登記申請書の他に、取り壊し証明書や解体業者の印鑑証明書、資格証明書もしくは会社謄本、解体した家屋の案内図、委任状(自分で申請する場合は不要)などが必要になります。
したがって取り壊し証明書や解体業者の印鑑証明書、資格証明書もしくは会社謄本を忘れずに解体業者から受け取っておくようにしましょう。
そして滅失登記を土地家屋調査士などに委任して行う場合は、3~7万円程度の手数料がかかりますが、手間と時間を惜しまなければ自分で行うことも可能です。
尚、自分で行う場合は1,000円程度の費用で申請することができます。
解体工事に着手する前には、電気、ガス、電話、インターネット、ケーブルTVなどのライフラインの使用停止手続きを必ず行っておかなければなりません。
万一怠ってしまった場合には、漏電やガス漏れ事故の発生など、非常に危険な場合があるので注意が必要です。
尚、水道に関しては工事中に解体業者が散水などで使用するケースが多いので、事前に業者と打ち合わせしておきましょう。
ライフラインの停止は、ガス会社や電力会社などに遅くても工事の1週間前までには連絡しておくようにしましょう。
解体工事の際の届け出の多くは施主(発注者)に届け出義務がありますが、解体業者が申請義務者になる届け出もあるので紹介します。
解体現場の敷地が狭く、作業中に公道に廃材の搬出車両等を駐車しておく必要がある場合には、「道路使用許可申請書」を提出しておかなければなりません。
申請は工事施工者が行う義務があり、これを怠った場合には道路交通法119条に違反する行為として、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科されることがあります。
「道路使用許可申請書」は最低でも作業を行う7~10日前までに使用する道路を管轄する警察署に提出して、事前に許可を受けなければなりません。
その際には、申請書に道路での駐車位置や駐車方法などを記載した図面を添付して提出します。
また申請には2,500~2,700円の費用がかかり、さらに業者の手間賃などが加算されるのが一般的なので、1~1.5万円ほどになることが多いといえます。
しかしこれらの費用は、見積もり書に記載されている諸経費の中に含まれていることがほとんどなので、念のために解体業者に確認しておくと良いでしょう。
ここまで、家屋の解体工事を行う際に必要となる手続きや届け出について具体的にご紹介しました。
家屋の解体は解体業者に依頼して工事だけを行えば良いというものではありません。
また、必要な手続きは解体業者に代行をたのむことができる一方で、自分で行うことによりコストを削減できるものもあります。
スケジュールとコストを十分に検討した上で、解体業者に依頼することと自分で行うべきこととを上手に分けて、後悔のないようにしましょう。
特にスケジュールについては解体工事着手前にすべきことや、解体工事終了後1か月以内にすべきことなど期限が定められているものが多いので、うっかり忘れてしまって過料に処されることがないようにしなければなりません。
そうした点も含めて、信頼できる解体業者と相談しながら一つひとつの申請手続きを着実に行っていくようにしましょう。
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