建設リサイクル法の施行にともない、一定規模以上の工事(対象建設工事)を行う場合は必要な届出が義務付けられるようになりました。
これにより解体工事を請け負う業者だけではなく、解体工事を発注する側(建築主)にもさまざまな制約や義務が課されるようになりました。
そこで本記事では、解体工事を行う際に不可欠となる建設リサイクル法の届出の流れやその手順など、発注者として知っておくべきことについて詳しく紹介します。
目次
建設リサイクル法とは平成12年(2000年)5月に交付された建設資材のリサイクル等について定めた法律のことで、正式名称は建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(環境省HP)といいます。
この法律により特定の建設資材について、その分別解体等及び再資源化等を促進するための措置を講じるとともに、解体工事業者については登録制度が実施されるようになりました。
そのため、解体工事を行う際には特定建設資材(コンクリート、アスファルト、木材等)を分別解体してリサイクルすることが義務付けられています。
そのため分別せずに解体して投棄した場合には違法行為となり、罰則の対象となります。
そして建設リサイクル法の適用を受ける建設工事の中には、床面積の合計が80㎡以上となる建築物の解体工事が含まれているので注意が必要です。
前述した建設リサイクル法の施行にともない、平成13年(2001年)5月30日から解体工事業を営む者は都道府県知事への登録が必要になっています。
未登録の業者は解体工事を請け負うことができません。
登録を受けないままで解体工事業を行った場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになっています。
建設リサイクル法の対象となる工事に着手する7日前には、各都道府県の建設リサイクル法届出窓口に届け出なければなりません。
床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体工事を行う際には、都道府県知事への届出が義務付けられているので注意が必要です。
建設リサイクル法の対象となる解体工事を受注する業者は、発注者および下請け業者に対して建築物等の構造、工事着手の時期などを説明する必要があります。
また、工事日程の概要、分別解体等の計画等について書面を交付して説明した上で、必要事項を明記した契約書面の取り交わしを行います。
そして発注者は工事に着手する7日前までに分別解体の計画等について届出を行う必要があります。
ただしこれらの手続きは解体業者が代行して届け出を行うことが可能です。
一方、都道府県知事は届出に係る分別解体等の計画が施工方法に関する基準に適合しないと認める時には計画の変更等を命令することができます。
また、分別解体や再資源化等の適正な実施を確保するために必要があると認めるときにも、工事の受注者に対して必要な助言、勧告、命令をすることができるとされています。
そこでこの章では、届出の対象となる工事や届出の手順、提出先などについて詳しく解説します。
建設リサイクル法の届出の対象となる工事は、一定の規模を超える建築物の新築・増築や修繕・模様替えなどがありますが、床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体工事もこれに該当します。
建設リサイクル法では特定の建設資材について工事現場での分別(分別解体)と、分別された廃棄物の再資源化が義務付けられています。
そのため、一定規模以上の工事を実施する場合には工事の発注者(依頼主)が工事着手の7日前までに届出を行う必要があります。
この届出の義務は発注者にありますが、解体業者に届出の手続きを委任することも可能です。
しかし届出を行わなかった場合の罰則はあくまでも発注者に向けられるので注意が必要です。
まずは必要書類を準備した上で、届出書に必要事項を記入します。
届出の義務は前述したように発注者にありますが、解体工事を行う際には建設リサイクル法の届出以外にも様々な提出書類や事前準備があるので、解体業者に委任して行うのが一般的です。
ただしその場合には、委任状を作成して届出全般を業者に依頼します。
建設リサイクル法対象工事の事前届出に必要な書類は下記の通りです。
必要書類は自治体によって異なることもあるので、事前に該当する自治体のホームページや電話問い合わせなどで確認しておく必要があります。
建設リサイクル法に基づく届出の提出先は、各都道府県の建設リサイクル法届出窓口です。
詳細は都道府県ごとにホームページなどで公開しているので、必ず確認しておきましょう。
万一、建設リサイクル法の事前届け出を忘れてしまった場合にはどうなるのでしょうか。
この場合は、届出の義務は発注者にあるので、たとえ解体業者が提出を怠ったとしても発注者には20万円以下の罰金刑が科せられます。
ただし解体業者に届出を委託していたにもかかわらず業者が届出を行っていなかった場合には、やむを得ない事情があれば責任を免れる可能性があります。
また、事前に自治体から通達や指導の連絡を受けることもあるので、その場合は速やかに従うようにしましょう。
解体工事を行う際に必要なその他の届出には、主に次のようなものがあります。
解体する建物にアスベスト(石綿)が含まれている場合には除去作業の届出が必要になり、作業の14日前までに各都道府県が定める窓口に届け出ます。
解体工事を行う敷地の前面道路上に搬出車両などを工事中止めておかなければならない場合には、道路を管轄する警察署に事前に申請しておく必要があります。
10㎡を超える建築物を解体したり除却したりする場合には、解体工事を行う前日までに建築主事を経由して都道府県知事に届け出る必要があります。
解体工事の各種届け出については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
建設リサイクル法の届出の注意点は以下の通りです。
ただし7日前が祝日、日曜にあたる場合もあるので注意が必要です。余裕を持って早めに届出を行っておくようにしましょう。
自治体によっては解体工事の標識設置(事前周知)が必要になる場合もあります。
解体予定の建築物にアスベストが含まれている場合には、法令に則って届出や提示の義務があります。
事前に各自治体で必要になる届出等についてよく確認しておく必要があります。
なお、解体業者等の受注者はリサイクル等が完了したときは発注者に対して書面でその旨を報告するとともに、リサイクル等の実施状況に関する記録を作成し、保存することになっています。
発注者は施工完了後に適切に廃棄物の再資源化が完了したことをきちんと確認しましょう。
アスベスト解体工事の流れについては、以下の記事を参考にしてください。
ここまで建設リサイクル法に関連することについて紹介しました。
現在、建設リサイクル法の事前届出は発注者(工事の依頼者)の義務になっているのですが、実際には解体業者が発注者の代理で行っていることがほとんどです。
しかし万一何らかの理由で届出忘れなどがあった場合には、発注者が罰金刑に処せられてしまうことにもなりかねません。
発注者は法令に対する意識が薄く、何かと業者任せにしがちなので、建設リサイクル法の届出の提出義務は自分自身にあることをしっかりと認識しておきましょう。
そしてこの法律の目的が建物の解体工事においては分別解体・再資源化を適切に行うことにあるので、この点についても忘れないようにしてください。
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