【プロ解説】解体工事を自分で行う場合の進め方、手続きや費用について

  解体工事の進め方
質問に答えるだけで解体費用相場がわかります
解体を検討している建物の種類はなんでしょうか?
解体工事を自分で行う場合の進め方、手続きや費用について

老朽化した自分の家を解体工事業者に依頼せず、自ら解体できるのでしょうか?

解体工事を行うにはさまざまな許可や申請が必要ですが、すべて自分で行うことができればかなりの費用を抑えられそうだと思っている方が少なくないでしょう。

しかし一方では、法律上の問題や認可・資格の問題が気になる方が多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、解体工事を自分で行う場合の進め方や必要な手続きについて紹介します。

解体工事を自分で行うことはできる?

解体工事を自分で行うことはできる?

親から相続した古家や田舎の古民家、小さな平屋建て住宅などの所有者で比較的時間がある方であれば、自分で解体したいと思っても不思議ではありません。

しかし実際には必要な許可や申請業務がわからなくて躊躇してしまうケースが多いのではないでしょうか。

結論からいえば、一般の方が自分で家の解体工事を行うことは可能です。

ただし許可の面では問題なくても、工事を進めていく上で必要な手続きや守らなければならないルールがあります。

そこでこの章では、自分で解体工事を行う上での注意点を紹介します。

自分の所有物を自分で解体する場合は「解体工事業登録」はいらない

解体工事を行う際には、通常は建設業の許可または解体工事業の登録が必要です。

また、産業廃棄物の運搬を他社から委託する場合には産業廃棄物収集運搬許可が必要になりますが、これらはすべて事業として作業を行う場合の許可です。

そのため、自分の所有物を自分で解体する場合には、特にこれらの許可は必要ありません。

しかし例外として、周囲に飛散する可能性の高いレベル1、レベル2に分類されるアスベスト(石綿)の撤去を行う場合には専門の許可が必要なので、これらの撤去作業を行うことはできません。

その他にも必要な届出がありますので、事前に必要な申請・手続きの内容を確認して不明な点は自治体に問い合わせを行うなど、合法的な手順を踏むことが大切です。

詳しい手続きや手順については次章でご紹介します。

解体工事を自分で行う場合の進め方:事前準備編

解体工事を自分で行う場合の進め方:事前準備編

解体工事を自分で行う場合であっても、相応の準備が必要です。

必要な手順を怠ってしまうとさまざまなトラブルが発生することにもなりかねません。

まずは工事を円滑に進めるための事前準備について解説します。

解体工事の作業計画を立てる

解体工事に着手する前には、綿密な作業計画を立てるようにしましょう。そして事前に準備すべきことや必要な手続き、届出などをリストアップします。

特に自分で解体する場合には、必要な手続きや届出を忘れがちなので要注意です。未提出や届出・手続きの不備には罰則規定があるので十分に注意しましょう。

さらには、必要に応じて建物内のアスベストの有無や敷地内の作業スペース、廃材の処分方法の確認など必要な準備を怠らないようにすることが大切です。

解体工事の各種届け出については、以下の記事を参考にしてください。

作業道具・重機、作業員の手配

家屋の解体工事は手作業により一人で行うこともできますが、時間がかかりすぎてしまうので適切な作業道具や重機、作業員を手配するのが望ましいでしょう。

ただし無免許で重機を操作すると違反になって罰せられるだけでなく、重大事故が発生する危険性が極めて高いので絶対に行ってはいけません。

必ず重機とオペレーターのリースを行っている専門業者に依頼をするようにしてください。

また、解体時に発生した木材等のゴミは市区町村によっては一般ゴミとして処分できる場合もありますが、そうでない場合にはリサイクルセンターなどに持ち込む方法もあります。

廃材の引き取り先と引き取り可能な廃材の種類についても事前によく調べておくことが大切です。

廃材の処分費用については、以下の記事を参考にしてください。

解体工事に関連する行政手続き

解体工事を行うためには、事前に提出が必要な届出や申請があります。

絶対に必要になるわけではありませんが、自分の場合にはどのようなものが該当するのかをよく確認しておくことが大切です。

建設リサイクル法の届出

延べ床面積が計80㎡を超える建物を解体する場合には、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(略称:建設リサイクル法)による届出が必要です。

家屋の解体工事に着手する7日前までに各自治体の管轄窓口へ届出書を提出することが義務付けられており、提出を怠った場合には最大20万円の罰金が科せられることになっています。

特定粉じん排出等作業実施届

解体する建物にアスベスト(石綿)が含まれている場合には、作業の14日前までに各都道府県が定める窓口に届出が必要です。

届出を怠った場合には3か月以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金が科せられます。

道路使用許可

工事期間中、工事車両を一般道に停車させて作業を行う必要がある場合には、道路を管轄する警察署に出向いて道路使用許可をもらう必要があります。

本来必要な道路使用許可を取得しないで工事を行った場合には、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられる場合があります。

近隣挨拶、ライフラインの停止

家屋の解体工事では騒音や振動、粉じんの発生などが避けられません。

工事中には近隣住民に迷惑を掛けることになるので、工事に着手する前には必ず近隣の方へ挨拶し、工事の説明を行っておくことが重要です。

また、工事着手前には電気・上下水道・ガス・電話などのライフラインの解約や停止も忘れずに行っておく必要があります。

ライフラインの停止までには数日間~2週間程度かかることもあるので、早めに連絡しておくと安心です。

なお、水道に関しては解体工事中に散水したり清掃の際に使用したりするので、停止時期を事前によく検討するようにしましょう。

お祓いをする

家屋を取り壊す前には、人によって神社の神主さんに依頼してお祓いをする方がいます。

お祓いは家の守り神に対して長い間見守ってくれた感謝と家の取り壊しの報告、および工事の安全を祈願するものですが、絶対に必要というものではありません。

あくまでも宗教的な儀式の一環として行うものですが、大切な人が長く住んでいたり思い入れの強い家だったりする場合にお祓いをする人が少なくありません。

解体工事を自分で行う場合の進め方:解体の仕方編

解体工事を自分で行う場合の進め方:解体の仕方編

事前準備が整ったらいよいよ解体工事に着手します。

この章では、自分で解体工事を行う場合の工事の進め方について紹介します。

養生の設置

解体工事では、粉じんや騒音、振動の発生を避けることができません。

近隣への迷惑を少しでも緩和するためには、建物の周囲に足場を組み、専用の養生シート(防音シート)で建物全体を覆ってほこりの飛散を防ぎます。

そして散水しながら解体作業を行うのが一般的な方法です。

養生に必要な足場材や養生シートについては、レンタルが可能です。

ただし足場を組む際には大きな危険をともない、設置後にも強風で足場が倒壊してしまうなどのリスクがあります。

近隣トラブルの原因になるので、安全面を考慮すると自分で足場を組むことはあまりおすすめできません。

解体工事の騒音問題については、以下の記事を参考にしてください。

解体の手順

実際に家屋の解体を行う際の大まかな手順は以下のようになります。

1:内装材の撤去

はじめに室内の畳、建具、住宅設備機器等を撤去したら、次に内装材を解体していきます。

この際、天井・壁の石膏ボードや土壁などをバールやハンマーを使って解体します。

解体した廃材は分別して場外に搬出します。

2:窓ガラスの撤去

窓ガラスを外して撤去します。

3:屋根材の撤去

瓦などの屋根材を手作業で撤去します。高所での作業なのでヘルメットを着用し、転落しないよう十分注意しながら作業します。

4:構造躯体の解体

小屋組や柱、梁を解体します。

5:基礎の撤去

ハツリ機やハンマーなどを使用して基礎の撤去を行います。トラックに積み込みができるように細かく砕く必要があります。

6:整地

最後に地面を平らにならします。

廃棄物の処理

解体後の廃材は通常なら産業廃棄物として処理する必要があります。

しかし自分で解体した場合には一般廃棄物としてみなされるのが一般的です。その場合には行政のリサイクルセンターで引き取ってもらうことが可能です。

しかし万一産業廃棄物としてみなされる場合には、産業廃棄物処分許可を所持した処分業者に処理を委託しなければなりません。事前に窓口で確認しておくと良いでしょう。

解体工事を自分で行う場合の進め方:工事後編

解体工事を自分で行う場合の進め方:工事後編

解体工事終了後にも必要な申請があるので、しっかりと覚えておきましょう。

建物滅失登記の申請

家屋を解体してから1か月以内「建物滅失登記」を行っておく必要があります。これをきちんと行っておくことで、法務局の登記簿上の建物が滅失されます。

申請を怠った場合には10万円以下の過料に処されることになっているので、忘れないように十分注意しましょう。

建物滅失登記については、以下の記事を参考にしてください。

解体工事を自分で行う場合の費用相場

解体工事を自分で行う場合の費用相場

解体工事を自分で行う場合の費用相場は、建物の大きさや構造、立地条件、重機の免許を取得するかどうかなどによって大きく異なります。

ここでは、一般的な費用についてご紹介します。

まずは近隣への迷惑防止のための足場材、養生シートなどのリース代として、50,000円~100,000円ほど見込んでおく必要があります。

さらに「整地・運搬・積み込み用及び掘削用」の車両系建設機械運転技能講習に100,000円程度、「解体用」の車両系建設機械運転技能講習に20,000円~25,000円程度かかります。

このほか、重機、車両のレンタル費用として1日当たり20,000円~30,000円程度見込んでおく必要があるでしょう。

また、廃棄物処理費用は「一般廃棄物」と「産業廃棄物」によって異なり、その区別は自治体ごとに基準が異なるケースがあります。

そして床面積が80㎡を超える建物を解体する場合には、建設リサイクル法に基づく届出が必要になります。

費用は自分で行う場合には基本的に無料ですが、念のため自治体に事前に確認しておくと良いでしょう。

最後に「建物滅失登記」費用が必要になります。自分で行う場合には1,000円程度で済みますが、土地家屋調査士などに依頼する場合は40,000円~50,000円程度が相場です。

解体工事を自分で行う場合の注意点

解体工事を自分で行う場合の注意点

解体工事を自分で行う場合には、特に安全対策と近隣対策に注意する必要があります。また、必要な届出や申請を忘れずに行う必要があります。

そのほか注意すべき点は次の通りです。

アスベスト除去工事は専門業者に依頼する

解体する建物にアスベストが使用されている場合には、専門業者に除去工事を依頼する必要があります。

とくに発じん性が高いとされるレベル1とレベル2に該当するアスベストが使われている建物の解体工事では、着工前に届出が必要です。決して自分で解体してはいけません。

廃棄物処理を工夫して費用を抑える

解体工事費用の中では、廃棄物処理費用が大きなボリュームを占めています。

自分で解体工事を行うのであれば、廃棄物をできるだけ一般廃棄物として処分することにより費用の大幅削減が可能です。

木造家屋で大量に発生する木材を一般ゴミとして処理できれば、大幅なコストダウンが可能になるでしょう。

まとめ

この記事では、家の解体工事を自分で行う方法を紹介してきました。

家の解体は自分で行うことで費用は節約できますが、多大な労力がかかってしまうことは間違いありません。

何よりも災害や事故が発生する危険性が非常に高いので、保険などに加入していなければ損害補償はすべて自己負担となります。

また、途中で諦めて解体業者に依頼すると通常よりも費用がかかってしまうことにもなりかねません。

そのため、自分で解体するには近隣住宅と離れて建っていて作業スペースが十分に確保できる、解体する建物が平屋で面積が小さい、時間的な余裕が十分にあるなど、一定の条件が必要になるでしょう。

いずれにしても「すべて自己責任になる」ということを十分に理解した上で行うことが大切です。

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この記事のライター

亀田 融

東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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