家屋を解体する場合は解体後に建物滅失登記を行うことが法律で義務付けられていますが、その後の固定資産税額がどうなってしまうのか心配な方が多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、建物滅失登記までの流れやそれにともなって固定資産税がどのように変わるのかについて解説します。
また、そもそも固定資産税とはどういうものなのかなどについて詳しく紹介します。
滅失登記に関する疑問点は以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にして下さい。
目次
建物を解体した後には、建物滅失登記を行わなければなりません。
これを怠った場合には不動産登記法第164条違反となり、10万円以下の過料に処される場合があります。
建物が滅失登記された後には固定資産税の課税台帳から建物が抹消され、翌年(毎年1月1日が判断基準)からは建物の固定資産税がかからなくなります。
解体工事を行っても建物滅失登記を行わない場合には、解体する前の状態のまま建物に課税され続けます。
なお、固定資産税に関しては特に必要な手続きはありません。
ここで問題となるのが建物滅失登記を行う時期と期限です。
解体工事後の建物滅失登記は、解体終了後1か月以内に管轄の法務局に申請することになっています。
建物滅失登記とは建物の登記簿を閉鎖する手続きのことで、法務局に記録されている登記簿にその建物がなくなったことを登記することをいいます。
これを行わなかった場合には、存在しない建物に対して固定資産税がかかり続ける以外にもさまざまなデメリットが生じることがあるので注意が必要です。
現状では特に不都合がなくても将来的に売買・相続・新築などを行う際に支障をきたしてしまうので、建物を解体した後には建物滅失登記を必ず行っておくことをおすすめします。
建物滅失登記を行う際には必要書類をそろえて、管轄する法務局の不動産登記申請表示係の窓口に提出します。
必要書類の中で解体業者に準備してもらう書類には、取り毀し証明書、解体業者の印鑑証明書、解体業者の資格証明書もしくは会社謄本があるので、これらの書類は解体業者から忘れずに受け取っておく必要があります。
建物滅失登記のおおまかな流れは以下の通りです。
建物滅失登記は自分で行うことも可能で、この場合の費用は登記手数料と提出先である法務局までの交通費など、わずか数千円程度で申請することができます。
しかし申請にはやや専門的な知識が必要であり時間もかかるので、一般的には土地家屋調査士に手続きの代行を依頼します。
なお、その場合の手数料は4~5万円程度が一般的な相場ですが、司法書士や弁護士にも依頼できる場合があります。
建物滅失登記とは法務局の登記簿から建物がなくなったことを登記することですが、これを行わないでいると次のようなデメリットが生じます。
このような事態を防ぐためにも、建物を解体した後には必ず建物滅失登記を行っておくようにしましょう。
家屋を解体すると固定資産税が高くなるという話を聞いたことがある方も多いと思います。
この話は本当なのでしょうか?
建物がなくなって「建物の固定資産税を支払う必要がなくなるのだから安くなるはず」だと思っている方が多くても不思議ではありません。
しかし家屋の解体後には固定資産税が上がってしまう可能性が高いといえます。
その理由を説明していきましょう。
住宅が建っている土地(宅地)は、固定資産税が軽減されるという特例があります。
居住用の建物が建っている土地は、固定資産税が最大1/6に軽減されているのです。
ところが解体工事を行って家屋を解体してしまうと、「住宅用地に対す固定資産税特例措置」という特例(住宅用地特例)を受けることができなくなり、土地の固定資産税が上がってしまうのです。
(総務省:固定資産税制度について)
正確には、固定資産税が上がるというよりも、固定資産税の特例が受けられなくなって通常の金額に戻るといった方が良いでしょう。
家屋の解体工事を行うと建物がなくなるので固定資産税がかからなくなる一方、実質トータルの固定資産税は上がってしまうケースが多くなります。
しかしこのことが国内に老朽化した危険な空き家が放置され続ける原因にもなっています。
固定資産税とは土地や家屋および償却資産(事業用資産)を所有している人が納めなくてはならない税金のことで、毎年1月1日時点で住宅などの不動産を所有している人に対して課税され、市町村が徴収します。
その使い道については特に限定されていませんが、主に市町村の環境の維持発展のために使われているようです。
固定資産税額は固定資産評価額と呼ばれる、家や土地の価格を元に算出した自治体ごとの納税額基準により納付額が決定しますが、販売価格が評価額になるわけではないので注意が必要です。
また、固定資産評価額は3年に1度見直しが行われています。
固定資産税は次のように算出されます。
固定資産税額=固定資産評価額(課税標準額)×税率(標準税率:1.4%) |
税率は自治体ごとに自由に定めることができますが、標準税率である1.4%を採用している自治体が多いようです。
固定資産税には前にも少し触れたように特例措置があり、住宅用地(宅地)の場合には以下の特例があります。
一方、住宅の場合にはこれらの特例があることから、老朽化した危険な空き家がそのままの状態で放置されてしまうケースもあります。
そこで2015年に施行された「空き家等対策特別措置法」では、そのまま放置すれば倒壊の危険性がある、衛生上問題があるなどの「特定空き家」に指定された場合には、固定資産税の住宅用地特例から除外されます。
その場合には税金の負担が重くなってしまうので、改善が難しい場合には空き家を解体するか、売却するかの検討が必要になります。
建物滅失登記は建物を解体した時だけではなく、建物が焼失した時や存在しないはずの建物が登記簿上に記載されている時などにも行います。
建物の滅失登記を申請すると、法務局から管轄の役所の固定資産税課に滅失登記を行ったことが通知されます。
建物滅失登記を行った以降からは建物に対する固定資産税を支払う必要がなくなるのですが、その日時が問題となります。
この章では、建物滅失登記と固定資産税の注意点についてご説明します。
固定資産税の基準日は毎年1月1日で、これを「割課期日」といいます。
固定資産税は1月1日時点の建物の所有者に対して課税されるため、1月になってから建物を取り壊したとしても、その年度については固定資産税を全額支払う必要があります。また、特に還付等もありません。
そのため、毎年年末近くになると12月中に滅失登記まで終わらせようとして、あわてて解体業者に建物の解体を依頼する方が多くなる傾向があります。
このようなことにならないためにも、固定資産税の割課期日を日頃からよく考えておくことが大切です。
また、通常では1月1日時点で土地に住宅が建っていない場合には、固定資産税の特例措置を受けることはできません。
ただし建て替えを目的に家屋を解体した際には、次の5つの要件を全て満たして住宅用地として認められた場合に固定資産税の特例措置を受けることができるようになります。
この特別措置を住宅用地の建て替え特例制度といいます。
固定資産税とその割課期日である1月1日とは非常に深いつながりがあるため、解体工事の日程調整の際に、以上の事柄を頭の片隅に置いておくと良いでしょう。
ここまで解体工事の滅失登記と固定資産税について解説してきました。
解体工事と固定資産税については密接な関係があり、こうした間違った知識や正しくない対応のままでいると後悔してしまうことにもなりかねません。
家屋の解体工事に着手する前には、固定資産税の支払いについてきちんとシミュレーションを行っておくことをおすすめします。
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