古家や空き家など、使われなくなった家屋の解体工事に使える補助金や助成金があることをご存知でしょうか?
解体助成金や補助金は各自治体によって違いがあり、申請に際し細かい条件が決められています。しかしある程度の知識を持っておくと、自分が申請するときに役に立ちます。
この記事では、解体工事助成金や補助金について詳しく解説します。
目次
一般的な家屋の解体工事の費用相場は、木造家屋30坪でおよそ100万円前後、鉄筋コンクリート造30坪あたりおよそ210万円前後といわれています。
解体費用は解体する建物の階数によって異なりますが、地下階があると特殊な重機の使用が必要な場合があり、他の一般的な家屋の解体費用と比べて2倍かかるとも言われています。
一軒家の解体費用相場については、以下の記事を参考にしてください。
家屋を解体する際、助成金や補助金が出ることがあります。
これらの支援は国ではなく地方自治体が行っている事業です。そのため、受け取れる金額や条件は一定でなく、各自治体によって異なります。
申請するときは解体する家屋がある自治体への届出が必要です。自分が住んでいる住所の自治体ではないので、ご注意ください。
助成金、補助金に大きな違いはありません。どちらも原則返済は不要で、解体工事を行う際の費用の一部を自治体が負担する目的で支給されています。
しかし助成金は条件に当てはまっていれば誰でも受給できるのに対し、補助金は受給する件数が限られています。
また、補助金の方が助成金よりも受け取れる金額が高い傾向があります。
助成金 | ・条件に当てはまっていれば、だいたい誰でも受給できる。 ・申請できる期間は長い傾向がある。 ・受給難易度は低い。 |
補助金 | ・予算が決まっていて、受給できる件数に限りがある。 ・申請できる期間が短い傾向がある。受給難易度は高い。 ・助成金よりも受け取れる金額が高い場合が多い。 |
簡単にいえば、補助金の方が件数や申請期間に限りはあるものの、もらえる金額は多くなる傾向が強いということです。
また、補助金の支給には審査がある自治体も多いようです。
ここで1度頭に入れておくべきなのは、どんな解体工事にも助成金や補助金が出るわけではないということです。
例えば空き家でもまだ人が住んで活用できると判断されれば、解体工事助成金等を受け取れない可能性が高いでしょう。
助成金や補助金の支給条件は自治体ごとに条件が異なるものの条件は似ていて、条件に当てはまらない場合は助成金や補助金などの支給条件に該当しないこともあります。
助成金や補助金などの支給条件には、以下のようなものがあります。
第一に、解体工事をする家屋が空き家であることが挙げられます。
特に「空き家対策特別措置法」で「特定空き家等」に指定された空き家は、助成金や補助金を受け取れる可能性が高くなります。
これは空き家が周辺住民に悪影響を及ぼす、また犯罪や不法投棄などのリスクがある、という理由から自治体がリスクを避けるためです。(国土交通省:空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報)
空き家が倒壊する可能性があるなど、危険度の高い家屋は助成金や補助金の対象となる可能性が高くなります。
老朽危険家屋対策事業を行っている自治体は数多くありますが、この背景として「空き家問題」が深刻になってきていることが挙げられます。
老朽危険家屋と判断される基準はとして、該当家屋の老朽度や「昭和〇〇年以前に建てられた家屋」など築年数を挙げる自治体があります。詳しくは自治体に確認をしてください。
各種税金を滞納している場合は、助成金や補助金を受け取れない可能性が高いでしょう。
解体工事の助成金等はほとんど税金から支払われているため、滞納している人に支払われないのは当然ということになります。
今一度、支払い忘れや滞納している税金がないか確認してみましょう。
解体工事助成金や補助金は、経済的に苦しい人のための制度です。そのため、所得が高い場合は自己資金で工事可能と判断され、助成金等は受け取れない可能性が高くなります。
基本的に前年度の所得が1000万円以上である場合は支給対象外となることが多いようです。
中には課税所得金額を明確に定めているところもあります。
例えば大阪府高槻市の制度「高槻市木造住宅除却工事補助金」では、課税所得金額507万円未満と定められています。
ここでは、空き家の解体工事の助成金や補助金事例を紹介します。
秩父市「空き家解体補助金」 | ・条件 昭和56年5月31日以前に建築された家屋・1年以上空き家であるなど5つの規定あり ・補助金額 上限50万円とし解体工事費の1/3 ※市外業者施工は上限40万円 |
日野市「木造住宅耐震改修工事助成」 | ・条件 昭和56年5月31日以前に着工された建物・2階建て以下の木造住宅 ・助成金額 上限100万円とし工事費用の4/5以内。 ※市内業者施工は上限80万円 |
台東区「老朽建築物等の除却工事費用の助成制度」 | ・条件 昭和56年5月31日以前に建築された建物 耐震診断で倒壊の危険性が高いと判断された建物 ・助成金額 上限50万円とし除却費用の1/3以内 |
江戸川区「老朽住宅除却工事助成制度」 | ・条件 昭和56年5月31日以前に建築された木造戸建住宅など、その他条件有 ・助成金額 上限50万円とし対象経費の1/2 |
名古屋市「老朽危険空家等除却費補助金」 | ・条件 条例に規定する「特定空家等」として市が認定した家屋 ・補助金額 上限60万円とし除却工事費用の1/2 |
春日井市「老朽空き家解体費補助金」 | ・条件 木造築22年、非木造築47年を経過した建物 ・補助金額 上限20万円とし対象経費の2/3 |
横浜市「住宅除却補助制度」 | ・条件 昭和56年5月末日以前に建てられた建物 木造住宅で耐震診断の結果が基準以下、または市が倒壊の恐れがあると判断した建物 ・補助金額 課税世帯20万円、非課税世帯40万円 解体する建物の㎡×13,500円×1/3 かかった費用の1/3、これら条件の最も低い金額 |
高槻市「木造住宅除却工事補助金」 | ・条件 昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅・2階以下など ・補助金額 一律20万円 ※市内業者の利用、子育て世帯の建て替えは各追加で10万円 |
泉佐野市「空家の除却工事補助制度」 | ・条件 昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅 ・補助金額 1戸あたり80万円限度。 ※条件によって最大130万円 |
島田市「特定空き家解体事業費補助金制度」 | ・条件 「特定空き家」と「不良住宅」のそれぞれの判定基準を満たした建物 ・補助金額 上限30万円とし解体費用の4/5 |
空き家だけでなく、現在住んでいる住宅の耐震対策やバリアフリー化などのリフォームにも助成金や補助金が出る場合もあります。
ここでは、各自治体の行っている制度等の事例を紹介します。
東京都足立区「木造住宅の耐震改修工事助成」 | ・条件 耐震診断の結果で耐震性が不足と判定された住宅 ・助成金額 上限は一般世帯80万円 |
大阪府大阪市「民間戸建住宅等の改修等補助制度」 | ・条件 平成12年5月31日以前に建築された住宅で、市内にある民間住宅 ・補助金額 上限100万円とし改修工事費用の1/2以内 |
広島県広島市「広島市住宅耐震改修補助制度」 | ・条件 昭和56年5月31日以前に着工された住宅で、居住している所有者等 ・補助金額 耐震改修工事費用の23%で、上限は構造評点0.4未満の場合50万円、0.4以上0.7未満の場合30万円 |
新潟県村上市「住宅リフォーム事業補助金」 | ・条件 申請する住宅に居住していて、所有者または所有者の2親等以内の親族 ・補助金額 上限20万円とし対象工事に要する費用の20% |
長野県茅野市「住宅リフォーム促進事業」 | ・条件 市内に居住者で市税の滞納がない、または定住予定者など ・補助金額 上限5万円とし一般住宅の場合補助対象工事費の10% |
解体工事に助成金や補助金があると分かったところで、申請するときに注意すべき点を見ていきましょう。
特に補助金に関しては期間が短く定められているものが多く、人気があるとすぐに上限に達してしまいます。
そうなると自治体は公募を締め切ってしまうので、申請が間に合わないという事態も起きてしまいます。
以下の注意点を押さえて、スムーズに申請できるよう準備をしておくのがおすすめです。
解体工事助成金等は審査がある場合が多く、申請してから承認されるまで時間がかかる場合もあります。
また、審査の結果受け取れない可能性ももちろんあります。
通常は審査の結果が判明するまで数週間といわれていますが、状況によっては1ヶ月以上かかることもあります。
解体工事助成金や補助金は、工事終了後に領収書などを提出してから金額が決まります。
そのため、実際に助成金等を受け取れるのは解体工事が終わってからです。
一旦は全額自己負担となりますので、注意点として頭に入れておきましょう。
これまで解説してきた通り、解体の助成金などは自治体によって異なります。
助成や補助を行っていない自治体もありますので、解体予定の自治体の情報は細かく把握しておきましょう。
助成金や補助金などを受給できたとしても、経済的に大きな負担となる人も多いと思います。ここでは、解体費用を節約するための具体的な方法を紹介します。
不用品は解体業者に頼むよりも自分で処分したほうが、解体工事費用の節約になります。
不用品処分を解体業者に頼んだ場合の相場は約6万円前後ですが、自治体に引き取ってもらった場合は数千円で済むことが多いようです。
また使えそうな家具を売ってしまえば、経済的負担も少しは軽減できます。詳しい不用品の処分方法が知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
費用面を重要視する方の場合は、解体工事を直接解体業者に依頼するのがおすすめです。
工務店や不動産屋に依頼することもできますが、中間マージンが発生するため費用が割高になります。一般的には2〜3割増しと考えておくと良いでしょう。
建物を解体したあとに絶対必要なのが、「建物滅失登記」です。
司法書士などに依頼をした場合は5万円程度の費用がかかりますが、ご自身で申請すれば1000円程度で手続きを行うことができます。
少し分かりづらい申請をする必要がありますが、自分で申請してみるのもひとつの節約方法と言えます。建物滅失登記については、以下の記事を参考にしてください。
空き家を解体せずにそのまま売却できれば、それに越したことはありません。ですが田舎で過疎地といった場合だとなかなか買い手がつかない可能性もあります。
いずれにせよ、自治体の空き家バンクを利用したり複数の不動産会社に相談したりと、なんらかの対策が必要です。
また、最近では少子化で人口の減少に伴い、空き家の売却がどんどん難しくなっています。そのため、なるべく早いうちに対策を行う必要があります。
空き家売却の際には、「空き家の譲渡所得の3000万円特別控除」(国税庁:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)という制度を検討してみましょう。
相続してから3年後の年末までの売却など細かい規定はありますが、3000万円の特別控除を受けることができます。
解体工事には助成金や補助金があるという解説をしてきました。これらは自治体の事業であり、申請方法や条件、受け取れる金額は自治体によってさまざまです。
ただし基本的な条件は共通しているため、条件を確認し、助成金や補助金の受給対象かどうかを解体工事前に確認するようにしてください。
また、各種助成金や補助金などは申請して承認するまでには数週間から長くて1ヶ月ほどかかるほか、受け取れるのは工事終了後となります。
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