親が亡くなって空き家を相続した場合、相続した建物に住まなくても所有しているだけで土地と建物に固定資産税をはじめとする税金が課税されます。
そのため、相続した空き家をそのままにしておくよりもできるだけ早い段階で有効活用する方法を考える必要があります。
そこで本記事では、相続した空き家に関わる固定資産税や空き家の活用方法についてご紹介します。
目次
現在国内においては「空き家」が増え続け、大きな社会問題になりつつあります。
今後も空き家が増えることが予想されるため、将来的に空き家を相続する可能性がある場合には、決して無関心ではいられません。
なかでも税金については直接身近に関わってくる問題なので、よく理解しておく必要があるといえます。
そこでこの章では、空き家にかかる税金の種類や金額について詳しく紹介します。
固定資産税とは毎年1月1日に土地と家屋など(固定資産)を所有している人に課せられる税金で、たとえそこに住んでいないとしても支払い義務が生じます。
税額は固定資産税評価額による「課税標準」に税率を掛けて算出されます。
固定資産税評価額は、土地や家屋などをどのように評価するのかを定めた「固定資産評価基準」に基づいて各市町村が個別に決める評価額のことをいい、不動産販売価格とは異なるので注意が必要です。
そして課税標準となる評価額は3年に1度見直しがされています。
また、税率(標準税率1.4%)は市町村により定めることができます。
現在所有している土地や家屋の固定資産税評価額を知りたい場合には、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書に記載されているので確認してください。
一方、土地に住宅が建てられている場合には「住宅用地の特例」があり、通常では土地に対する固定資産税の課税標準が1/6(ただし土地の面積200㎡までの部分で、200㎡を超える部分については1/3)に減額されます。
また、実際に居住しないままで空き家として放置しておいても、土地に建物が建っている場合には「住宅用地の特例」が適用されます。
土地に建物が建っている場合の固定資産税は次のようになります。
小規模住宅用地(200㎡までの部分) | 固定資産税評価額×1/6×1.4% |
一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 固定資産税評価額×1/3×1.4% |
それでは固定資産税評価額が土地2,500万円、建物500万円で、土地の面積250㎡の場合の固定資産税を計算してみましょう。
200㎡までの部分 | 2,500万円×200㎡/250㎡×1/6×1.4%=約4.67万円 |
200㎡を超える部分 | 2,500万円×50㎡/250㎡×1/3×1.4%=約2.33万円 |
500万円×1.4%=7万円 |
固定資産税は約14万円になります。
なお、建物が未登記であったとしても固定資産税は課税されるので注意が必要です。
都市計画税は毎年1月1日に都市計画法による都市計画区域のうち、市街化区域内にある土地と家屋を所有している人に対して課せられる税金で、固定資産税と一緒に課税通知が送付されます。
そのため、市区町村によっては都市計画税の課税がない場合もあります。
納税額は固定資産税と同様に固定資産税評価額に税率を掛けた額になりますが、税率は0.3%を上限に各市町村が定めます。
また、都市計画税についても住宅用地の特例があり、住宅が建っている場合には200㎡までの部分については評価額の1/3、200㎡を超える部分については評価額の2/3に減免されます。
土地に建っている家屋を解体して更地にする場合には、固定資産税の住宅用地の特例を受けられなくなります。
そのため、建物に対する固定資産税はかかりませんが、土地の固定資産税は最大で6倍になってしまいます。
固定資産税評価額が2,500万円、面積250㎡の土地の場合の固定資産税は次のようになります。
2,500万円×1.4%=35万円 |
この場合の固定資産税は35万円になり、建物があった時の固定資産税約14万円と比較すると、大幅にアップしてしまいます。
未登記建物の解体工事については、以下の記事を参考にしてください。
誰も住んでいない空き家であっても、毎年固定資産税と都市計画税が課税されます。
そしてその支払い義務は、毎年1月1日に不動産登記簿に所有者として登録している人にあります。
また、登記簿上の所有者が亡くなっている場合には、所有者の相続人に支払い義務が移ります。
固定資産の所有者は管轄の法務局で相続登記を行うことで変更されますが、年内に所有権の移転が行われない場合には相続人が連帯して納付義務を負うことになっています。
誰か1人が全額支払えばほかの相続人の支払い義務はなくなりますが、その後は法定相続分にしたがって相続人の間で清算することになります。
また、親が固定資産税を滞納していたことが発覚した場合には滞納した額の納付義務もすべて相続されるので要注意です。
このような場合には相続放棄の検討をする方法がありますが、まずは「どのような支払い方法があるのか」を自治体に相談してみると良いでしょう。
固定資産税、都市計画税は国税ではなく、市町村(東京23区内は東京都)が課している地方税で、通常は6月、9月、12月、2月の年4回に分けて支払うことがほとんどです。
一括払いを選択することも可能ですが、一括払いをしても割引されることはありません。
毎年4~6月ごろに振込用紙と納税通知書が郵送されるので、案内にしたがって支払うことになります。
固定資産税、都市計画税を滞納してしまうと、「延滞税」が別途で課せられるほか、滞納期間が長引いてしまうと財産が差し押さえられます。
最悪の場合には強制徴収されてしまうことにもなりかねません。
万一経済的理由で支払いが困難になった場合には、まずは役所の担当窓口で相談してみることをおすすめします。
猶予制度を利用できることもありますし、滞納処分を待ってもらえる可能性もあります。
土地の上に住宅が建っている場合には住宅用地の特例を受けることができ、土地に対する固定資産税の課税標準が最大で1/6に減額されることは前述した通りです。
しかしこのことが国内に老朽化した家屋が放置され続ける大きな原因となっています。
そこで平成27年度(2015年度)の税制改革により、「特定空き家」に指定されると固定資産税の「住宅用地の特例」から除外されるようになりました。
つまり固定資産税の減税が適用されなくなり、土地の税負担が最大で6倍となってしまいます。(200㎡を超える部分については3倍になります。)
簡単にいえば、固定資産税が6倍になるというよりも固定資産税の特例がなくなって正規なものに戻るといった方が正しい表現といえるでしょう。
「特定空き家」とは「空き家対策特別措置法」(国土交通省:空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報)で次のように定義されています。
このような状態にある空き家をそのまま放置しておくと周辺住民にさまざまな悪影響を与え、しいては周辺地域の資産価値も大幅に下がってしまう懸念があります。
こうした理由から「特定空き家」が指定されるようになりました。
それでは「特定空き家」に指定され、最終的な行政代執行が行われるまでの流れを見ていきましょう。
なお、年内に改善すれば税金の増額(小規模住宅用地からの解除)はなしとされています。
しかし行政による助言・指導・勧告・命令・行政代執行の措置を受けた空き家は年々増え続けており、空き家の増加とともに今後も増加するものと予想されています。
空き家対策特別措置法については、以下の記事を参考にしてください。
空き家に所有者自らが居住できればほとんどの問題は解決可能と思われますが、相続した空き家の場合はそういうわけにもいかないことがほとんどです。
それでは、空き家を放置しないためにはどのような方法があるのでしょうか。
賃貸物件として貸し出すことができれば家賃収入が得られ、その範囲内で管理会社に管理を委託することも可能です。
しかし賃貸に出すためには建物のメンテナンスや立地条件、顧客ニーズなどのさまざまな問題をクリアする必要があるでしょう。
そのため、十分に検討した上で決定することが大切です。
売却可能な物件であれば、売却してしまうことで譲渡所得に対して所得税が課税されるものの、売却後には税負担や管理・メンテナンスの負担から逃れることができます。
特に将来も利用する予定がないのであれば、前向きに検討してみることをおすすめします。
更地にして月極駐車場やコインパーキングとして活用したり、資材置き場として貸し出したりする方法があります。
しかし一般的に所有していて問題のある土地は有効的な活用方法が見つからないことが多いので、固定資産税などの税負担を十分に考慮した上で対策を講じることが大切です。
空き家の活用方法は、以下の記事でも紹介しています。
空き家を相続すると税金やメンテナンスなど何かと負担になりがちですが、自治体によってはさまざまな支援策が講じられています。
空き家の活用方法が分からないという方に対して、さまざまな補助金や助成金が用意されているケースや、直接的な助成ではなくても他の制度を利用して空き家を有効活用することも可能です。
そこで全国の自治体の支援策を3つ紹介します。
なお、助成金についてはそれぞれ年度ごとに予算が組まれているため、予算を使い切ると期限内でも申し込みが終了となる場合がありますのでご注意ください。
台東区では戸建ての空き家を活用するため、子育て世帯向けの賃貸住宅として貸し出すことを条件に、改修費用の一部補助を実施しています。
住宅部分の延べ床面積が50㎡以上あることなどが条件で、補助金の額は補助対象費用の1/2(補助限度額は50万円)です。
群馬県伊勢崎市には、老朽化した空き家の除却工事費用一部補助制度があります。
空き家の保有者が対象で、市税の滞納がないことや売却目的でないことや旧耐震の空き家であることなどの一定の条件をクリアすれば、この制度を利用することができます。
石川県金沢市の「かなざわ空き家活用バンク」では、バンクを利用して空き家に住む場合には内部の改修費について補助を受けることができます。
以上は自治体の空き家支援策のほんの一例ですが、少子高齢化が進み空き家が増えることで近隣環境への影響がさらに深刻化することが懸念される我が国においては、今後もさまざまな支援策が期待されます。
今一度、自分に該当する支援策がないかどうかを調べてみることをおすすめします。
自分で居住する予定のない空き家を相続した場合のリスクはさまざまですが、なかでも毎年の固定資産税の支払い義務は無視するわけにはいきません。
そして敷地に建つ老朽化した家を解体した場合には、土地の固定資産税は最大で6倍にもなってしまいます。
そして万一滞納した場合には延滞税が課せられるほか、最悪の場合には財産が差し押さえられてしまうことにもなりかねません。
本記事を参考に、早期にしっかりとした対策を講じるようにしましょう。
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