誰も住まなくなった家は老朽化により倒壊する危険性が高くなるばかりでなく、雑草の繁茂や犯罪の温床になるなど周辺環境にも悪影響を及ぼします。
そこで老朽化した空き家を解体しようと思った時に、まず気になるのが解体費用のことではないでしょうか。
家の解体費用は100万円~200万円程度かかることが一般的に知られていますが、同じ面積の家でも建物の構造や立地条件、周辺環境などによって一軒一軒費用が変わります。
また、門や塀、物置、カーポート、植栽、地中埋設物など家屋以外の解体や撤去が必要なケースもあるでしょう。
そこで本記事では、空き家の解体費用の相場と、払えない場合の対処法などを詳しく紹介します。
目次
空き家の解体費用の内訳は、以下の通りです。
項目 | 内容 |
仮設工事費 | 周囲の家への粉じんや騒音などの被害を抑える目的で、建物の周囲に足場を組み、養生シートで建物を覆うための費用 |
本体工事費 | 建物の解体に必要な費用(主に作業員の人件費) |
付帯工事費 | 建物以外の塀や門扉、物置、植栽などの撤去費用 |
廃棄処分費 | 解体工事で発生した廃棄物を処分場まで運搬して廃棄処分するための費用 |
整地費 | 解体後に重機などで敷地を平らにならす作業費 |
重機回送費 | 解体工事に使用する重機を運搬車で運ぶための費用 |
各種届出、申請費 | 解体工事を行う上で必要な届出や申請を行うための費用 |
その他の費用 | 諸経費 |
解体工事の見積もり書の書式は業者により多少の違いがありますが、ほとんどのものがこれらの費用をもとに作成されています。
空き家の解体費用は地域ごとに相場が異なるほか、さまざまな要因によって影響されます。
解体費用に影響する要因として代表的なものは、建物の構造や階数、立地条件、周辺環境、アスベスト含有建材の有無、付帯工事の有無などです。
また、解体工事を行う時期によっても費用が左右されることがあるので注意が必要です。
この章では、空き家の解体費用相場に影響する要因について詳しく解説します。
空き家の解体費用は建物の構造によって異なりますが、強度が高くて壊しにくいほど手間がかかるので費用が高くなります。
一般的には木造<鉄骨造<鉄筋コンクリート造の順に費用が高くなるようです。
廃棄処分費を含めた床面積1坪あたりの工事単価(坪単価)は次の通りです。
建物の構造 | 解体費用の相場(坪単価) |
木造 | 3万円/坪~4.5万円/坪 |
鉄骨造 | 3.5万円/坪~6万円/坪 |
鉄筋コンクリート造 | 4万円/坪~7万円/坪 |
解体工事費用は地域によっても費用の相場に違いがあり、一般的に都市部に近くなるほど費用が高くなる傾向があります。
また、アパートの場合であっても、おおむね上記の金額になることがほとんどです。
一軒家の解体工事の費用相場については、以下の記事を参考にしてください。
解体する建物がどんな場所に建っているのかによって、解体作業の効率が大きく異なります。
そのような理由から解体費用は現場の周辺環境によって左右されるといえますが、ここでは通常よりも費用がかかってしまう事例を紹介します。
現場が住宅密集地にある場合とそうでない場合とでは解体費用が異なります。
住宅密集地にある場合には、工事中に騒音対策や防じん対策を講じるなど近隣に対する特別な配慮が必要なことが多いため、解体費用が割高になります。
解体工事の騒音については、以下の記事を参考にしてください。
解体現場までの道路や敷地の前面道路が狭い場合には工事車両や重機が入れない可能性があるため、手作業が増える可能性があります。
通常であれば廃材を1回で運搬できるところが、小型車で2回に分けて運搬しなければならないこともあるでしょう。
また、交通整理のための人員も必要になるので、これらの費用が通常の価格に上乗せされます。
解体する建物が隣の家と近接して建っている場合には、隣家対策として防音壁を設置したり、慎重に手作業で解体しなければならなくなったりします。
そのような場合には、解体費用も当然割高になってしまいます。
周辺道路や前面道路、敷地が狭くて解体工事に重機を使用することができなければ全てを手作業で行うことになるため、解体に手間がかかってその分費用が割高になります。
また、前面道路と敷地に高低差がある場合も同様です。
解体工事費用に大きな影響を与えるもののひとつにアスベスト(石綿)があります。
アスベストは古い建物に使用されていることがありますが、現在は人体に有害な物質として指定されているので、解体撤去する際には特別な対策が必要になります。
その分の費用は解体工事の金額に上乗せされるので、解体費用が高くなる要因のひとつといえます。
そのため、アスベストの使用が懸念される場合には、事前にアスベスト使用の有無を調べておく必要があります。
アスベストは危険度に応じて3つのレベルに分けられていますが、レベルごとに必要な対策が法律で定められています。
発じん性が高くて最も危険なレベル1の場合には、撤去作業を行う際に建物全体を覆って減圧処理する必要があるため、アスベストの除去に高額な費用がかかります。
木造住宅では危険度の高いアスベストが使用されているケースは少ないのでそれほど大きな影響はありませんが、木造以外の建物の場合には注意が必要です。
レベル1の吹き付けアスベストがある場合には、解体費用がおおむね2倍になると言われており、解体費用が150万円であればアスベスト除去費用も150万円ほどかかってしまいます。
アスベスト使用物件の見分け方については、以下の記事を参考にしてください。
解体工事の際、ブロック塀や門扉、カーポート、植栽などを併せて撤去する場合には費用が別途でかかりますが、このほか地面の中に埋設物がある場合にも別途費用がかかります。
建物の下にコンクリートの塊があったケースなど、依頼主が知らずにいたことも少なくないので注意が必要です。
解体工事費用には地域差があり、地方よりも都市部の方が、一般的に解体費が高くなる傾向があります。
これは人件費(職人の手間賃)や廃棄物の処分費などが地域によって異なるためで、同じ都道府県でも郊外より市街地の方が高くなることが多いようです。
解体費用を安く抑えるためには、解体工事業者の手間をできるだけ少なくすることが最も近道です。
工事に着手する前までにできるだけ家財や植木の処分を自分で行い、残置物を少なくしておくことで解体費用を節約することができます。
不用品は解体業者に任せて処分してもらうこともできますが、その場合は産業廃棄物として処分するため、一般の廃棄物として処分するよりも処分費が高くなってしまいます。
そのため、自分でごみの回収日に出したり粗大ごみとして処分したりすることで、処分費用を抑えることができます。
また、リサイクル業者や廃品回収業者に依頼して引き取ってもらえば、多少なりとも値段がつくこともあるでしょう。
このように、ほんの少しの手間を惜しまなければ、解体費用を安くすることが可能です。
残置物撤去の費用相場については、以下の記事を参考にしてください。
住宅が建っている土地の場合には、人が住んでいるかどうかに関わらず固定資産税が最大で1/6に軽減されるという特例があります。(200㎡を超える部分については1/3に軽減されます)
また、都市計画税についても200㎡以下の部分については1/3、200㎡を超える部分については2/3に軽減されています。
一方、解体後は土地の固定資産税と都市計画税の特例が受けられなくなってしまうので、双方の影響を考慮すると固定資産税は上がってしまう可能性が高いといえるでしょう。
正確には固定資産税が上がるのではなく、特例が受けられなくなって土地の固定資産税が通常の金額に戻るというのが正しい表現です。
相続により空き家になった不動産を相続人が売却した場合には、当該不動産を売却した際の譲渡所得から3,000万円を控除することができます。
これは2016年度の法改正により導入された比較的新しい特例で、まだ認知度が低いためにあまり利用されていないようです。しかし大きな節税効果があるといえるでしょう。
一方、控除を受けるためには、適用期間や相続した家屋の要件、譲渡する際の要件などがあるので注意が必要です。
倒壊の危険があるので少しでも早く空き家を解体したいと思っても、解体費用をすぐに支払うことができない場合にはどうすればよいのでしょうか。
解体業者に解体費用を払えなければ工事の依頼はできませんが、いくつかの対処法があります。
この章では、その対処法をご紹介します。
空き家の解体・除去に関する国の補助金制度はありません。しかし、自治体によっては空き家の解体・除去費用に対して独自の補助を行っている場合があります。
自治体ごとに補助金額や条件などが異なりますが、解体費用の1/5から1/2程度が支給されることが多いようです。
また、実際に補助金が支払われるのは解体工事が終わって業者に工事代金を支払い、領収証や証明などが発行されてからになるので注意が必要です。
まずは地域の自治体で補助があるかどうかを確認してみると良いでしょう。
土地の売却を前提とする空き家の解体工事の場合には、銀行などの金融機関の融資を受けて解体工事業者に代金を一括で支払い、分割でローンを返済する方法があります。
物件が売却できれば、その時点で売却代金を使ってローンを一括返済することができます。
現在各金融機関で利用できるローンには、空き家の解体資金に利用する場合の「空き家解体ローン」や解体以外にもさまざまな用途に対応できる「フリーローン」があります。
条件があてはまる場合には「空き家解体ローン」を利用すると、通常の「フリーローン」よりも金利が大幅に安くなるメリットがあります。
ローンについての詳細はこちらの記事を参考にしてください。
土地を売却するために空き家の解体が必要になる場合には、先に土地を売りに出して売却が決まってから建物を解体する方法があります。
土地に空き家が残ったままの状態で売りに出し、売買契約を締結してから引き渡しまでの間に建物の解体を行うようにできればベストです。
売買契約時には買主から手付金が入るので、そのお金を使って引き渡しまでに解体することが可能になります。
固定資産税は物件の所有者に対して課税されるものなので、空き家の相続を放棄した場合には固定資産税の支払い義務はありません。
相続人の死を知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申し立てをすると相続放棄ができます。
しかし仮に相続人全員が相続放棄をしても、「管理責任」が残ってしまいます。所有をしていなくとも、清掃や修繕など管理にかかる費用が発生してしまうのです。
相続放棄した空き家の管理責任をなくして完全に縁を切るためには、空き家を相続財産管理人に引き渡し、国へ帰属させる手続きをしてもらう必要があります。
空き家を長期間放置し続けると、近隣住民に迷惑を掛ける恐れがあります。また、老朽化が進めば屋根の飛散や倒壊などの事故に繋がることもあります。
不適切な状態で放置された空き家は「特定空き家等」に指定されて、行政からの指導に応じなければならないこともあるでしょう。
老朽化した空き家を解体することで行政からの勧告を受けることもなくなり、土地を売却する際にもスムーズに進むメリットがあります。
「特定空き家」に関わる空き家対策特別措置法については、以下の記事を参考にしてください。
空き家を放置し続けるとさまざまな問題が発生することになります。
一方で空き家を解体するためには、最も安価な木造住宅の場合でも1坪あたり3万円~4.5万円ほどの解体費用がかかります。
しかし解体費用が払えない場合には、各自治体の補助金制度を利用できるケースがあったり、銀行ローンを利用したりする方法があります。
老朽化した空き家を放置しておくと非常に高いリスクを抱えてしまうことになるので、できるだけ早く対処することが大切です。
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