解体工事では工事終了後に高額な追加費用が発生し、当初の見積もりよりも解体費用がかかってしまったという話をよく耳にします。
しかし建物を解体する際には工事中に地中埋設物が見つかるという事例もあり、どんな解体現場においても追加費用の発生はあり得る話なのです。
この記事では、どんなときに追加費用が発生するのか、追加費用に関するトラブルを回避するためにできる事前対策にはどんな方法があるのかを解説します。
追加費用が発生する可能性は、解体工事に限らず全ての工事にあるといわれています。
では、解体工事の際の追加費用はどこで発生するのでしょうか?
解体工事中には騒音や振動、ほこり、粉じんの飛散がつきもので、近隣住民へ少なからず迷惑をかけることになります。
そのため、あらかじめ養生シートを設置する必要があります。
ただし養生シートを設置しても大きな音を完璧に防ぐことは難しく、クレームが発生することもあります。
その際は、より防音性の高いシートに変更せざるをえない場合があります。
このような場合は養生シートを途中で変更することになるため、追加費用が発生します。
他にも、強風などの自然災害でシートが破れてしまい、取り換える必要が生じたと場合に追加費用が発生する可能性があります。
このように、養生に関する追加費用の発生は実際によくあることですので、「シートを換えると追加費用の対象となる」と頭に入れておくと良いでしょう。
解体工事の騒音については、以下の記事を参考にしてください。
解体工事の際、工事着工前に建物内に残された物を残置物と呼びます。
残置物は施主側で事前に処理をするのが一般的です。
施主側で処分することが決まっていたのに処分されていなかったり想定よりも残置物が多かった場合は、追加費用の対象となります。
ただし事前の現地調査で見積もりを出したのにも関わらず追加費用を請求された場合は、業者の見積もりミスの可能性があります。
この場合は業者側の過失であり、追加請求に応じる必要はないと考えられます。
現在はアスベストが重量の0.1%を超える製品の輸入や製造が禁止されていますが、古い建物には断熱目的などで使われることがありました。
アスベストは人体に影響を及ぼすといわれているため、アスベストの使用されている建物の解体の際は、適切なアスベスト除去作業を行うことが義務付けられています。
現地調査の段階でアスベストの使用が判明すれば、アスベスト除去費用も見積もりに記載されるでしょう。
しかし工事中にアスベストの使用が判明する場合もあり、このような場合は追加費用が発生します。
アスベストの除去作業には1~3の作業レベルがあり、レベルが上がるにつれて費用が高額になっていきます。
初めにアスベストが使用されていると分かっていた場合でも、除去中にもっと高度な技術が必要と判断された場合は、追加費用が発生することになります。
アスベスト使用物件の見分け方については、以下の記事を参考にしてください。
解体工事では、事前に現地調査を行った上で正式な見積もりが作成されますが、地中に物が埋まっていた場合、見ただけでは分からないこともあります。
このようなものは地中埋設物と呼ばれ、建築廃材や昔の建物の杭や基礎、大きな岩など、さまざまな種類があります。
また、今では廃棄物処理法によって禁止されていますが、昔は建物を解体したときに出た廃材などを地中に埋めてしまうこともありました。
そのため、建築廃材や地中に埋められた杭などが地中から見つかることがあり、このような場合は撤去が必要となります。
井戸や浄化槽がある場合も、追加で解体費用が発生する可能性があります。
あらかじめその存在が分かっていれば最初の見積もり金額に組み込まれますが、過去に井戸などが解体され埋め戻されていると、現地調査で気付けない可能性があります。
さらに井戸の埋戻しが不十分であった場合、あらためて埋戻し作業が必要となります。
井戸の埋戻しについては、以下の記事を参考にしてください。
解体工事の際は、騒音や振動、ほこり、粉じんの飛散などがあり、近隣住民へ迷惑をかけてしまうものです。
住民側もある程度は仕方ないと思いつつ、ストレスの限界を超えればクレームとなります。
クレームが出てしまうと業者が対応を迫られるため、工事が中断することもあります。
そのような場合、重機リース代+遅延した分の追加費用やその分の人件費が必要となります。工事が長引けば長引くほど追加費用が高くなる可能性があると覚えておきましょう。
1日遅延するだけで、かなりの高額になることもあります。ただし工事の進捗状況による遅延の場合は業者の責任となり、追加費用を支払う必要はほとんどありません。
道路が狭く予定していた重機が使用できないとなるとその分手作業が増え、工事の遅延や人件費などの理由から、追加費用が発生する可能性があります。
しかし、事前に現地調査の際に周辺道路の事情をしっかり確認していれば回避できる可能性もあります。
そのため、事前の現地調査では建物だけでなく、周辺の道路や車両の置き場なども確認しておくと良いでしょう。
解体工事では、隣家に損害を与えてしまう事例があります。
そのような場合、基本的には業者が補修費用を負担することになりますが、中には損害賠償請求の発生などの大きなトラブルになることもあるのです。
損害賠償ともなると金額が高額になる可能性があり、業者が保険に入っていないと施主に負担がかかることも考えられます。
しかし優良業者であれば保険に入っているはずなので、見積もりの段階で保険加入の有無を確認させてもらいましょう。
実際に解体工事で追加費用を請求された場合、どう対応すればよいのでしょうか?
必ずしも支払わなくて良い場合がありますので、しっかり対応方法を知っておきましょう。
追加費用は安易に支払ってはいけません。支払う前に、まずは見積もり書と契約書を確認するようにしてください。
追加費用について見積もり書や契約書に注意書き等で記載されている場合があります。記載があれば、その内容に反していないか確認しましょう。
内容に反しておらず追加請求の妥当性があると分かったら、支払いに応じるようにします。
何も確認せずに支払ってしまうと損をする可能性がありますので、注意してください。
追加費用について見積もりに記載があり内容に反していなかったとしても、現地調査を行った上での建物面積の測定ミスについては、業者側の過失となります。
その場合は追加請求に応じる必要はありません。
他にも業者側の過失と思われる請求に関しては、支払わなくて良い場合がありますので、請求の妥当性を確認するようにしましょう。
追加費用は、施主としてもなんとなく気分の良いものではありません。特に業者側に過失がある場合には、トラブルになることもよくあります。
ここでは、追加費用でトラブルにならないための対策を紹介していきます。
正式な見積もりを出してもらう前には、必ず現地調査をしてもらうようにしましょう。可能であれば施主も立ち会うと良いでしょう。
現地調査をしない業者は正確な見積もりを出せず、悪徳業者の可能性もあります。そのため、現地調査をしない解体業者は選択肢から外しましょう。
現地調査の際は、アスベスト使用の有無や隠れている古井戸、地中埋設物などを調べるために、建物や土地の図面や資料を用意することをおすすめします。
なるべくたくさんの情報を事前に提供した方が、追加費用の発生リスクが少なくなります。現地調査に立ち会うメリットについては、以下の記事を参考にしてください。
現地調査後に正式な見積もりを出してもらう際、どんな場合に追加費用が発生するか、予想される追加費用の金額を書面に記載してもらいましょう。
追加費用の発生条件などを事前に確認しておくことにより、予期せぬ追加費用の発生を抑えることができます。
見積もりは、作業項目ごとに数量や単価などを詳しく記載してもらうようにしてください。
細かく記載されることで、何にどれだけ費用がかかっているのか、追加費用がどれだけ必要なのかを知ることができます。
中には「解体工事費用一式○○万円」など一式で記載する業者も存在しますが、請求金額の正当性が分かりにくいので、詳しく記載してもらうようにしてください。
知り合いの業者や知り合いから紹介された解体業者であっても、口頭での見積もり算出や口約束で工事を依頼するのは絶対にやめましょう。
問題が起こった際に、大きなトラブルへと発展するリスクが高くなります。工事範囲の認識ズレなども起こしやすいので、どんな場合であっても見積もり書と契約書は必ず作成してもらいましょう。
追加費用が発生した場合の確認事項を契約書に盛り込んでもらうのも1つの手です。
例えば「地中埋設物が見つかったので処分しました」と事後報告されても、処分した後では本当に埋設物があったかどうかの確認もできません。
そのため、契約書には「工事中の地中埋設物発見等、想定外に追加費用の発生が見込まれる場合は早急に施主へ報告し、確認後に追加工事を行う」などと明記してもらうと良いでしょう。
また、「施主へ確認なしに追加工事をした場合には追加費用請求はしません」など趣旨の文言を盛り込んでもらうと良いでしょう。
見積もりが相場と比べて大幅に安い場合は悪徳業者の可能性があります。このような場合は解体工事後に追加請求をされることも少なくありません。
また、地中埋設物などがなかったのにも関わらず、地中埋設物に対する追加費用の請求を行う悪徳業者も存在します。
このようなトラブルに遭わないためにも、最初から優良業者に依頼を行うことが大切です。優良解体業者の見分け方については、以下の記事を参考にしてください。
解体費用をめぐり施主と業者とで折り合いがつかず、トラブルになってしまうという話はよく耳にします。
施主が追加費用に納得できず支払いを拒むと手抜き工事をしようとしたり、高圧的な態度になったりと、業者から嫌がらせを受けることがあります。
このような場合は、消費者生活センターに相談すると良いでしょう。
消費者生活センターでは解決方法をはじめ、解決できないと判断された場合には弁護士の紹介などを行っています。
解体工事費用を抑えすぎて失敗した例については、以下の記事を参考にしてください。
解体工事では、追加費用が発生することもあります。
養生シートや残留物の処分、アスベストの有無や地中埋設物の有無などの仕方のない追加費用があります。
その一方で、悪徳業者による不正な追加費用の請求トラブルも度々発生しています。
そのため、追加費用が適切であるかを判断するためにも、必ず事前に現地調査を行うことが必要です。
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