解体工事後に家を建て替える場合や土地の売却を検討している場合、解体工事の費用はできるだけ安く済ませたいという方も多いと思います。
しかし極端な値引きを行う業者や見積もりに記載された解体費用が相場と比べて安すぎる業者を選んだ場合、解体工事を失敗する可能性が高くなります。
そこでこの記事では、解体工事費用を抑えすぎて失敗した例や業者選びの際の注意点などを紹介します。実例を知ってどんな業者を選べばいいのかを参考にしてみてください。
目次
解体工事を行う際には、業者選びが最も重要といえます。
この章では、解体工事を依頼する際に確認したいポイントを紹介します。
解体工事は騒音や振動、粉塵が発生するほか、廃材の搬出作業中には搬出車両の駐停車などが伴うため、近隣住民からクレームが発生しやすい工事といわれています。
そのため、事前に工事内容や作業日程などを近隣住民に告知すると共に、作業中には近隣住民への配慮が不可欠となります。
さらに廃棄物は適切な方法での処分が義務づけられていますが、違法な処分を行うと解体業者だけではなく、施主も罰則を受けることもあります。
解体業者を選定するにあたっては価格の安い業者を選びがちになりますが、信頼できる業者に依頼することが大切です。
信頼できる解体業者を選ぶためには、次の点を抑えるようにしましょう。
信頼できる業者の選び方については、以下の記事でも詳しく解説しています。
解体業者を選ぶ上では、業者の規模も気になるものです。
解体業者の規模は社員数によって分類できますが、そのほとんどが社員数10名以下の小規模解体業者と数十名規模の中規模解体業者で構成されています。
小規模解体業者は費用が割安なのに対して工事品質が比較的高い傾向があります。
しかし、一般的にホームページなどを公開していないことが多く、連絡を取る手段が限られてしまいます。
一方、中規模解体業者はホームページなどで自社の宣伝を行っていることが多く、積極的に営業・集客活動を行っている傾向があります。
比較的業務がシステム化されていて安心感があるのがメリットですが、担当者によって施工品質にバラツキが生じやすいといえるでしょう。
どちらが良いとは一概にはいえませんが、前述した信頼できる解体業者の特徴を備えた業者であることが最も大切といえます。
解体工事には一定の費用相場はあるものの、実際には解体する建物の築年数や劣化具合、構造、仕様、周辺環境、立地条件などによって費用が異なります。
そのため、正確な見積もり書を作成するためには事前に現地調査を行います。
重機の使用可否や廃棄物を搬出するトラックの大きさ、隣地との距離、養生が必要な 範囲、アスベスト使用の有無などを細かく調査・確認する必要があります。
業者が現地調査を行わずに見積もり書を作成した場合には、解体工事着工後に追加工事を請求される可能性が高くなるので注意が必要です。
この章では、安すぎる業者に依頼して失敗したケースと不安を感じた場合の対応方法を一緒に紹介します。
解体工事は素人には分かりにくい部分も多く、施主側に疑問や不安はつきものです。だからこそ疑問や不安があれば、すぐに質問をすることが求められます。
安すぎる解体業者に依頼して失敗したケースとして第一に挙げられるのは、手抜き工事です。
解体工事は通常、養生シートを設置してから施工するのが一般的です。この養生シートは、工事で発生する騒音や振動、ほこりの飛散等を防ぐ役割をしています。
しかし安すぎる業者の場合、養生シートではなく簡単なブルーシートを使用するといったケースがあるようです。
その場合、解体工事で発生する騒音や振動などが外に多く漏れることになり、近隣住民との間でトラブルになってしまった事例があります。
そのため、見積もりの際に養生シートを使う仮設工事費の項目が安すぎると不安を感じた場合は、養生シートの種類や騒音対策などを尋ねてみると良いでしょう。
また、実際に養生シートの現物を確認したり、クレームが起こったときの対応方法などを聞いておくと安心です。
解体工事の騒音については、以下の記事を参考にしてください。
見積り費用が安すぎる場合、解体工事終了後に高額な追加費用を請求されることがよくあります。
そもそも必要な費用が見積もりに入っていないために起こるケースですが、悪徳業者の場合は初めから高額な追加費用を請求するつもりで安く見積もっていることもあるのです。
しかし追加費用自体はどんな業者でも発生する可能性があるため、追加費用が発生する場面や追加費用の請求手順などを確認しておくと良いでしょう。
解体工事における追加費用については、以下の記事を参考にしてください。
解体工事で発生した廃棄物は、産業廃棄物として適切に処分する必要があります。処分費用についても費用相場があるため、廃材の処分費用を削ることはできません。
そのため、廃棄物処理費用が費用相場や他の業者と比較してかなり安い場合や、項目自体がないような場合には注意が必要です。
業者の中には廃棄物を適切な方法で処分せず、一定期間自社で管理した後に不法投棄を行う悪徳業者も存在しています。
不法投棄はどんな場合であっても法律違反にあたり、解体業者だけではなく発注者である施主に対しても責任が問われる可能性もあります。
不法投棄をしない業者の見分け方については、以下の記事を参考にしてください。
解体費用が相場よりも安い場合は人件費などを削っている可能性が高く、結果的に雑な工事につながります。
雑な工事をしてしまうと、思わぬ事故の発生や近隣住民との間での騒音問題などが起きる可能性もあります。
そのため、業者選びの際は大前提として費用相場からかけ離れた安価な金額で工事を請け負っていないかを確認するようにしてください。
その他のトラブルについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
解体工事費用の支払い方法は工事の進捗具合に合わせ、分割払いか工事後の全額支払いが一般的です。
しかし業者によっては、工事の着手前に一括で支払いを請求してくることもあります。
このような場合は悪徳業者や経営が厳しい業者の可能性が高く、最悪の場合は工事が途中であっても作業を放棄されてしまうこともあります。
そのため、支払い方法として分割払いや前払いを指定された際は、正当な理由を尋ねてみると良いでしょう。
しかしあまり一般的ではないため、依頼をしない方が無難かもしれません。
工事費用が安すぎる業者の場合、マナーの悪い職人を使っていることがあります。
例えば簡易トイレを設置せず現場付近で用を足され、近所トラブルになったという事例があります。
そのため、近隣住民への挨拶の有無や配慮の仕方などを事前に聞いておくと安心です。
解体工事業者の中には賠償保険などに入らず、保険未加入のまま工事を受注している業者も存在します。
どんな解体工事現場であっても隣家のブロック塀を壊してしまったり、近隣住民に怪我を負わせてしまったという事故が起こる可能性もあります。
そのような場合に確実に補償などを行えるかどうかも、業者選びのポイントになります。
そのため、保険に入っているか教えてくれない業者は依頼するのを避けた方が良いでしょう。
解体工事にはさまざまなトラブルが発生する可能性があります。
そこでこの章では、トラブルを未然に防ぐための注意点を紹介します。
解体工事期間中には騒音や振動、粉塵などの発生や、工事車両の路上駐車などで近隣住民に迷惑をかけてしまうことが多くなります。
そのため、工事に着手する前には近隣住民に挨拶を行い、きちんと工事期間や作業内容の説明をして近隣住民の理解と協力を求めておく必要があります。
その際には業者に全てを任せるのではなく、施主も業者と一緒に挨拶回りをすると良いでしょう。
業者任せにしてしまうと思わぬトラブルが発生しがちなので、契約する前に業者との間で近隣挨拶に関する取り決めをしておくと安心です。
解体工事では近隣住民とのトラブルばかりではありません。
壊すべき箇所が撤去されていなかった、解体して欲しくない部分まで壊されてしまったなどといったトラブルが発生することがあります。
解体工事着工前と工事完了時には施主が現場の立ち合いを行うことで、こうした行き違いを回避することができるようになります。
建物の解体工事では廃棄物が発生します。
このような廃棄物のことを産業廃棄物といい、家庭ごみなどの一般廃棄物とは異なる方法での処分が必要になります。
そして産業廃棄物は、産業廃棄物処分の許可を持つ業者でなければ処分することができないので注意が必要です。
許可を持たない業者に依頼した場合には不法投棄が行われる可能性があるので、業者を選ぶ際には許可証の提示を求めて確認することをおすすめします。
産業廃棄物についての詳細や不法投棄をしない業者の見極め方については、以下の記事を参考にしてください。
建設リサイクル法とは、建設工事で排出される産業廃棄物の再資源化(リサイクル)の促進を目的とする法律のことをいいます。
建設廃棄物においては「廃棄物処理法」と並んで重要な法律です。
この法律によって、一定の建設工事(対象建設工事)での分別解体や廃棄物の再資源化などが元請業者に義務付けられています。
建設リサイクル法の届出の流れや手順などは、以下の記事で詳しく解説しています。
マニュフェストは産業廃棄物管理票とも呼ばれ、廃棄物の処分方法の記載や業者の押印があります。
業者が不法投棄などの違反を起こしていないことを確認するための重要な書類です。
廃棄物が適正に処分されたことをマニュフェストで確認することで、施主が罰則を受ける事態を防ぐことができます。
解体工事中の思わぬトラブルや近隣からの苦情を防ぐためには、事前に十分な対策を講じておくことが大切です。
そして万が一トラブルが発生した際には、業者がどのような対応をしているのか事前に確認しておく必要があります。
そこでここでは、近隣への苦情対策について紹介します。
解体工事に着手する前には必ず工事のお知らせを近隣住民に告知しておくことが大切です。
着工する時期が決定した時点で、工事内容や工期、工事責任者や緊急連絡先などの情報をきちんと近隣住民に伝えておきましょう。
近隣挨拶のマナーや注意したい5つのポイントについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
解体工事中には粉塵が発生するため、粉塵対策として足場に防塵シートを設置して解体する建物を覆ったり、散水しながら解体作業を行ったりします。
ただし、解体工事に着手する前に水道を止めてしまうと散水作業を行うことができなくなってしまうので、できるだけ水道は使えるようにしておくことが大切です。
解体工事を行う際には防音シートで建物を覆うなどの対策をしっかりとしたとしても、残念ながら騒音をゼロにすることはできません。
したがって、近隣住民に対して事前に大きな音や振動が発生する日時を伝えておくなどの配慮を心掛けることが大切です。
解体工事中に発生する騒音の基準値やクレーム対処法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
工事完了後には敷地内の片付けだけではなく、周辺道路や隣地の敷地内に土やゴミなどが散乱していないかどうかをよく確認することが大切です。
できれば工事完了時に、施主が自分の目で最終的な確認を行うようにしましょう。
解体する建物の中に家具や家電、日用品などの残置物が数多く残っていると、それらの処分も解体業者が行うことになります。
解体業者が処分する場合には別途手数料が発生するばかりでなく産業廃棄物として扱われるので、粗大ごみや一般廃棄物よりも廃棄費用が割高になってしまいます。
庭にある不用品、自転車なども同様ですので、室内や庭の不用品は事前に自分で処分しておくと解体費用の節約につながります。
不用品の処分方法については、以下の記事を参考にしてください。
解体工事中に業者の不注意や不手際などの過失によって隣家に損傷を与えてしまった場合には、業者が損害賠償責任を負うことになります。
そのため、業者が損害賠償保険に加入しているかどうかが重要なポイントとなります。
多くの業者は損害賠償保険に加入していますが、中には未加入の業者もいるので注意が必要です。
一方、以下のように施主に過失があった場合には施主が損害賠償責任を負うことになるケースがあります。
解体工事にともなう損害賠償責任の有無や責任範囲の問題は非常に難しくなることが多いです。
そのため、当事者同士の話し合いで解決できない場合には、弁護士などの第三者に介入してもらうことも検討した方が良いでしょう。
解体工事費用が他と比べて安いからといって、すべてが悪徳業者であるとはいえません。
こでは、正当な理由があり安くなっている場合について紹介します。
解体業者は会社の規模もさまざまです。
元請けや下請けという会社の構造になっていると、依頼を受けるのが元請け業者で、実際の工事をするのは下請け業者になります。
そのような場合は手数料と呼ばれる中間マージンが発生し、その分発注者側が負担する費用が大きくなります。
しかし受注から施工まで一貫して自社施工を行っている解体業者の場合は中間マージンは発生しないため、その分解体費用が安くなる傾向にあります。
自社で職人を有している場合は工事を外部の職人に依頼する必要がないため、その分解体費用が安くなります。
自社で解体工事に使う重機を保有している場合も、解体費用が安くなる傾向があります。
保有していない場合は重機をリースする必要があり、リース代は発注者側負担となることが多いようです。
そのため、自社で重機を保有している業者は他の業者よりも価格を安くして工事を受注することができます。
解体工事では廃棄物の適切な処分が義務づけられていますが、収集運搬業許可などを持っている業者であれば、廃材の処分費用が安くなります。
また、収集運搬業許可などの保有業者は建設会社やハウスメーカーの下請けに入っていることが多く、社会的に信用があるといえるでしょう。
収集運搬業許可は経営状態が赤字だと更新ができないため、収集運搬業許可を得ている業者は良好な経営をしている業者であるともいえます。
解体現場と業者の事務所の間の距離が近いほどガソリン代がかからないため、解体費用が安くなる傾向があります。
解体工事は他の建築工事とは異なり、スキルの面で業者による差が少ないため、同じ条件であれば価格差が少なくなる傾向にあります。
解体費用は一般的な木造住宅で概ね1坪あたり3万程度といわれているほか、その他の付帯工事費用を含めても、1坪あたり4.5〜5.5万円程度が相場といわれています。
例えば床面積30坪の木造住宅を解体する場合は、付帯工事などを含めても全体で150万円前後になります。
解体費用を安く抑える方法としては、建物内の残置物撤去を自分で行ったり、自治体の補助金制度を活用する方法があります。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
解体費用は正当な理由があって安い場合もありますが、安すぎる場合は慎重に依頼を検討した方が良いでしょう。
また、見積もりの段階から過剰な値引きをする解体業者にも注意が必要です。このような場合は、正当な値引きの理由を確認するようにしてください。
また、値引き交渉をするときには、一つ一つ項目を確認しながら担当者とよく話し合うと良いでしょう。
解体工事を失敗しないためには、複数の業者から相見積りを取ると良いでしょう。
相見積りの際は費用総額だけでなく、それぞれの項目を比較するようにしてください。
特に足りない項目があるときは要注意です。なぜその項目がないのかをしっかり確認するようにしましょう。
また、「解体工事費用○○円」と表記されているものもありますが、このような一式表記を行う業者の場合は後から追加請求などをする可能性があります。
解体工事の見積もり項目は、以下のように4つに分けられることが多くなります。
仮設工事費用 |
養生シートの設置 足場の設置 簡易トイレの設置 敷鉄板の設置など |
解体工事費用 |
家屋の解体 重機回送費 現場管理費など |
付帯工事費用 |
残置物の撤去や運搬費 井戸の埋戻し費 ウッドデッキの撤去・処分費など |
諸経費 |
各種届出費用 事務手数料など |
解体工事の前後には、さまざまな手続き自治体への届け出が必要です。
この章では、解体工事に着手する際に必要な手続きや届け出について紹介します。
解体工事中の近隣からのクレームを避けるためには、工事着工前に近隣への挨拶廻りを行っておくことが不可欠になることは前述した通りです。
また、自治体によっては解体工事に着手する前に業者による説明会を義務付けていることもあるので、各自治体の対応に関する情報収集を事前に行っておくようにしましょう。
建設リサイクル法では、延床面積が80㎡以上の建物の解体工事を行う際、事前申請が必要になります。
着工の1週間前までに工事を行う場所や工事内容等を記載した書面を市区町村の担当窓口に届け出ることになっています。
この申請義務は施主本人にありますが、多くの場合は解体工事業者が代行して行っているので、必ず届出の有無を確認しておきましょう。
現場が狭小地などの場合には、解体工事中に敷地の前面道路に重機やトラックなどを駐車したまま作業することがあります。
このような場合には、所轄の警察署に道路使用許可申請書を提出しなければなりません。
なお、申請は事前に工事業者が行います。
解体工事前には、施主が電気、ガス、電話やインターネット、ケーブルTVなどのライフラインの使用停止手続きを行います。
尚、水道については解体工事中に散水等で使用することがあるので、事前に解体業者と打ち合わせておきましょう。
解体工事前のライフライン停止手続きについては、以下の記事で詳しく解説しています。
浄化槽を使用している場合には、事前に浄化槽の汲み取りも忘れずに手配しておくようにしましょう。
浄化槽の汲み取りについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
不動産登記法では、建物の解体後1か月以内に建物滅失登記を申請しなければならないとされています。
滅失登記の申請を怠った場合には10万円以下の過料に処すると定められているため、忘れることがないように注意が必要です。
また、滅失登記の申請には解体業者が発行する建物取り壊し証明書や解体業者の印鑑証明書などが必要になるので、必ず解体業者から受け取っておくようにしましょう。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
解体工事費用が安すぎる業者に依頼した場合は、以下のようなリスクがあります。
このようなリスクはトラブルを招くことにもつながります。リスク回避のためには複数の業者から相見積りをとり、項目ごとに比較することが重要です。
安すぎる解体業者を選んで失敗しないように業者選びは慎重に行いましょう。
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