解体工事は騒音や粉じんが発生などにより、近隣トラブルや事故を引き起こす可能性が高い工事であるといわれています。
また、高額な追加請求を行う業者やずさんな工事を行う悪徳業者もいるため、業者選びを慎重に行った方が良いといわれています。
そこで今回は、解体工事中に起こりやすい近隣トラブルや事故の事例とその回避方法について紹介します。
トラブルを起こさないための業者の見極め方も紹介していますので、解体工事をお考えの方はぜひ参考にしてください。
目次
はじめに、解体工事中に起こりやすい近隣トラブルや実際に発生した事故を紹介します。
解体工事中に最も起こりやすい近隣トラブルは、騒音や振動によるトラブルです。
解体工事は基本的に重機や工事車両を使用するため、騒音や振動が大きく、近隣住民にストレスを与えてしまいます。
近年は騒音規制法や振動規制法により騒音の大きさや作業時間などの規制が行われましたが、夜勤や子育て中の方など日中家で過ごしているケースもあるため、トラブルになりがちです。
解体工事で発生する騒音の基準などについては、以下の記事で紹介しています。
次に多いのは、解体工事中に発生する粉じんトラブルです。
粉じんは近隣住宅の外壁や洗濯物を汚すだけでなく、健康被害も与えてしまいます。
近隣住民にアレルギー症状を引き起こしてしまう可能性があるので注意が必要です。
業者は粉じんが近隣住宅に飛散しないように養生シートを設置しますが、中には養生シートをヨレヨレに張る業者や破れている養生シートをそのまま使用する業者も存在します。
隣家を傷つけるトラブルも、解体工事中に発生するトラブルのひとつです。
重機の操作ミスや解体時の飛散物により、隣家の雨樋や外壁を傷つけてしまうことがあります。
そういった場合には解体業者が賠償金を支払うことになりますが、保険の適用範囲以上の賠償金やそもそも損害賠償保険に加入していない業者もいるため、依頼主も請求されるケースがあります。
隣家の敷地の無断使用は、解体現場が狭く養生スペースが足りないときに起こりうるトラブルです。
養生スペースを増やすために解体業者は隣家に許可を得て敷地を借りるのですが、この対応を行わずに無断で敷地を使ってしまうと後々大きなトラブルになりかねません。
隣地にスペースを借りる際は、必ず許可をとっているか確認しましょう。
解体工事では敷地内に車両を置くことは基本できないため、近くの道路で路上駐車します。
しかし駐車場所が悪いと近隣住民とのトラブルの原因になったり、渋滞を引き起こすなどの迷惑もかけてしまうこともあります。
そのため、こちらも合わせて事前に対策が必要です。
昔に比べて作業員のマナーは良くなりましたが、未だにマナーの悪い作業員もいます。
敷地外での喫煙や作業時間外でも大きな声を出して騒ぐなどのマナー違反をしてしまうと、近隣住民に不快感を与えてしまいます。
また、たばこのポイ捨てをしたときには火災などの大きな問題に発展しかねません。
作業員のマナーの悪さは近隣住民トラブルの元になりますので、どんな作業員が働いているのか詳しく知る必要があります。
2016年10月11日には、マンションの工事現場で鉄パイプが落下し、歩行者の男性に直撃して死亡する事故が起こりました。
足場の解体作業中に起こった事故のため、解体工事でも起こりうる事故といえます。
一般的な住宅は高さが6mほどあるため、鉄パイプが落下したときには大きな事故に繋がりかねません。
また、人だけでなく近くの車や舗装を傷つけるトラブルも起こる可能性があります。
2010年10月、岐阜県で起きた事例では解体中の建物の外壁が落下、通りかかった高校生が下敷きとなって死亡に至っています。
原因はワイヤーなどによる固定がされていなかったことで、安全対策の不備が痛ましい事故を招いてしまったというものでした。
2015年4月に中野区で起きた事例では解体中の建物が倒壊し、隣家に倒れかかる事故になっています。
幸いなことに人命に被害はなかったようですが。一歩間違うと大事故になっていたかもしれません。
こうした安全対策の不備や不足は、人命だけではなく近隣家屋へ被害や損害を与えてしまいます。
次に、解体業者との間で起こりうるトラブルを紹介します。
解体業者とのトラブルとして、工事範囲の認識のズレによるトラブルが多くあります。
例えば、事前に現場監督に「物置や庭木を残しておきたい」と伝えたのに建物と一緒に壊されてしまうケースがあります。
このケースは、現場監督に伝えても職人に伝わっていないことが原因で発生しています。
未だに、アスベストの処理が不十分な解体業者が存在します。
アスベストには健康被害が確認されているため、適切に処理しなければなりません。
しかし、適切な処理を行わずにそのまま工事を始めた場合、近隣住民に健康被害を与えてしまいます。
たとえ業者の問題であっても場合によっては依頼主も法的に罰せられる可能性があります。
解体工事とはいえ、雨天や嵐など天候による影響は避けられません。問題は、天候とは関係のない理由によって工期が大きく遅れる場合です。
明確な理由や説明もなく作業が行われていない、ストップしている場合には、臆することなく問い合わせましょう。
事前に作成されている工程表をチェックして遅れている理由や工程の再確認を行い、完工期日を打ち合わせましょう。
業者によっては作業を行わずに放置する、誠意のある対応をしない場合があるかもしれません。
解体後の再利用が決まっている場合は、工期の遅延はそれらのスケジュールにも影響することになります。場合によっては損害賠償の請求も視野に入れて交渉する必要があります。
当初提示された見積り金額とは別に、追加費用を請求されることもあります。
追加費用を請求されるケースとしては、「産業廃棄物の量が想定以上だった」「地中埋設物が出てきた」などの理由が多いようです。
納得のいく事実が提示される場合はともかく、そうでない場合には鵜呑みにせずに説明を求めましょう。
安価な見積り金額を提示して工事を請け負い、高額な追加費用を請求する悪質な業者も存在します。
このような事態に対応するために、契約前に追加費用についてよく擦り合わせておくこと、業者任せにせずに現場をよく確認しておくこと、可能なら写真に撮っておくことが重要です。
解体工事で発生しやすい追加費用については、以下の記事で詳しく解説しています。
ここまでは解体工事で起こりやすいトラブルを紹介しました。
解体工事そのものは業者に任せるしかないものの、近隣トラブルや事故を回避するために施主である依頼主ができることもあります。
家を新築する時には近隣住民に挨拶回りをしますが、解体する場合も同様です。
解体工事を行うにあたっては騒音や粉じん、工事車両や重機の出入りなどで少なからず迷惑や不便をかけることになるため、業者任せにせず一緒に挨拶回りを行うのがベストです。
近隣挨拶のマナーについては、以下の記事を参考にしてください。
トラブル回避には、何よりも信頼できる業者へ解体工事を依頼するということに尽きます。ここでは、優良業者を見分けるためのポイントを紹介します。
もっとも基本的な指標として、きちんと登録されている業者かどうか確認してみましょう。
建物の解体を事業として行うためには建設業の免許、または解体工事業の認可が必要です。見積りを依頼する業者がこれらの許可を得ているか、事前に確認が必要です。
騒音対策や事故対策をしっかりと行ってくれる業者に依頼しましょう。
依頼前に確認すべきポイントは、養生シートと重機の質です。見積り段階で「防音性に優れたシートなのか?」「重機は低騒音型なのか?」を確認することで騒音対策をしっかり行う業者なのか判断できます。
また、見積りを細かく記載してくれる業者は、良心的で工事も丁寧に行うことが期待できるため、事故対策にも繋がります。
どれだけ安全に配慮し注意をしていても、事故が起こってしまうことがあります。
工事中に発生した事故については基本的に業者に責任がありますが、足場を設置中に隣家の塀を傷つけた、解体中に重機で物置を傷めてしまったなどの事故が起きる可能性もあります。
こうした事故に対応するために業者は損害賠償保険に加入していますが、保険への加入有無について選定の段階で確認しておくと安心です。
解体工事が原因で近隣との人間関係が壊れることがないように、業者任せにしないことが重要です。
解体工事の実績の確認も大切です。実績数は、解体業者のホームページなどから確認できます。
経験豊富な業者は近隣トラブルや不測の事態に慣れているため、安心して工事をお願いすることができます。
また、業者によっては工事風景の写真を載せている親切な会社もありますので、どんなふうに工事を進めるのか確認する上でもおすすめです。
見積もり書が提示されたら、中身の項目を細かく確認していきます。
見積もり書のチェック項目は以下になります。
見積書を見る場合にはとかく金額にのみ注目しがちですが、十分な安全対策が計上されているかなど、確認しておきたいポイントは少なくありません。
業者による現場調査や見積り提示は、不明点や疑問点を解消する最大のチャンスです。コミュニケーションをとる中で、工事を委ねるのに安心な業者かどうか見極めていきましょう。
解体工事に伴って発生する廃材などの産業廃棄物の処理についても、確認しておきたいところです。
時々ニュースなどで報じられますが、廃棄物の不法投棄は社会的な問題になっています。
廃材などの産業廃棄物はリサイクルできるものとできないものに分別され、最終的には処分場へ持ち込まれます。
この廃棄物の処理過程が記録されたものがマニフェストと呼ばれるもので、業者は適切に処分した証明としてマニフェストを保管しておく義務があります。
不法投棄された場合は依頼主である施主の責任が問われることもありますので、丸投げせずに工事後にマニフェストのコピーをもらうなどの対応をしておくと安心です。
リサイクルや廃棄物の処分については、環境への影響の観点から今後も規制が強化されるものと予想されます。
解体工事の業者選びはとても大切です。
信頼できる業者を選ぶことで近隣トラブルや業者間のトラブルを回避することができます。
また、見積書や契約内容を細かく確認することで工事中や工事後のトラブルも回避することができます。
信頼できる業者を選んで解体工事で発生しやすいトラブルを回避しましょう。
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