古くなってしまった一軒家を解体するかどうか、建て替えすべきかどうかなどで迷っている方にとって最も気になるのが、家の解体費用のことではないでしょうか。
家の解体費用は決して安くはなくまとまった解体費用がかかることから、事前に解体工事の費用相場や工程などを把握し、信頼できる業者に依頼を行うことが非常に大切です。
そこで本記事では、解体工事の相場や費用を安くするためのコツ、注意点などを詳しく解説します。
目次
家の解体費用を決定する大きな要因のひとつが、解体する建物の「広さ(面積)」と「構造」です。
建物が広ければ広いほど解体する面積が増えるのでコストが上がるのは当然のこととして、2階建てや3階建て、地下室がある場合にも解体費用が割高になります。
また、構造が丈夫で頑丈な建物ほど解体するのに手間がかかったり、特殊な工具や重機が必要になったりするので、解体費用が高くなります。
多少の地域差がありますが、1坪あたりの解体費用は以下になります。
建物の種類 | 1坪あたりの解体費用 |
木造 | 3〜5万円 |
鉄骨造 | 4〜6万円 |
鉄筋コンクリート | 5〜8万円 |
解体する建物の立地条件や周辺環境などによっても解体費用は大きく変動するため、解体工事の見積もり書はそれらを考慮した上で作成されています。
この章では、一軒家を解体する際のおおまかな流れを紹介します。
解体工事の詳細な流れについて知りたい場合には、以下の記事を参考にしてください。
満足度の高い解体工事を行う上では、業者の選定が非常に重要です。
信頼できる解体業者を選定するためには、必ず3社程度の複数の業者に見積もり依頼を行い、各社の見積もり書の内容を比較検討することが大切です。
見積もりを依頼された業者は現地調査を行なった上で見積もり書を作成しますが、業者を決定する際には単に見積もり金額の安さで選ぶのではなく、以下の点が正しく見積もり書に記載されているかを確認することが大切です。
また、見積もり書の記載内容以外にも担当者の対応や人柄などに注目することも大切です。
見積もり書を受け取った後は比較検討の上で解体業者と契約を結びますが、契約の際には口頭の口約束ではなく、必ず書面で工事請負契約書を取り交わすようにしてください。
契約書なしの解体工事のリスクについては、こちらの記事を参考にしてください。
「契約書がない状態で解体工事の契約をしても問題ないでしょうか?」
解体業者と契約後、解体する建物内部の残置物や不用品の撤去、電気やガス・電話などのライフラインの撤去依頼や、お住まいの自治体側に建築リサイクル法に基づく届出を行います。
また、解体工事中には近隣住民に迷惑をかける可能性があるため、解体工事の前に近隣住民に挨拶を行い、工事の日程や作業内容、連絡先を伝えておきます。
工事前の近隣挨拶については、以下の記事を参考にしてください。
着工準備後、解体工事に着手します。
解体工事は一般的に、足場や養生シートの設置→建物内部の残置物等の処分→建物本体の解体工事→廃材の搬出作業→整地といった流れで行われます。
解体工事で発生する廃材は産業廃棄物として扱われ、法律で適正な方法で処理することが義務付けられています。
廃棄物の処分が適正に行われたかどうかは、マニフェスト票(産業廃棄物管理票)と呼ばれるもので確認することができます。
不法投棄などのトラブルを回避するためにも、必ずマニフェスト票(E票)を確認してください。
また、解体工事の際には、予期せぬ地中埋設物が発見されることもあります。
地中埋設物とは地中に埋まったままの建物の基礎や設備・配管・浄化槽などを指しますが、これらの地中埋設物は解体作業と同時に撤去する必要があります。
地中埋設物を撤去せずそのままにしてしまうと、後の土地利用計画にも支障をきたします。そのため、必ず地中埋設物の有無を確認しておく必要があります。
地中埋設物や整地については、以下の記事を参考にしてください。
「解体工事の際に発見される地中埋設物にはどんな種類があるのでしょうか?」
解体工事にかかる期間は、建物の大きさや構造、立地条件などによっても多少異なりますが、30坪程度の木造2階建住宅の場合には概ね10日から2週間程度になります。
これよりも小さな20坪程度の平屋建て住宅であれば、4~5日程度で終了します。
ただし家屋内の残置物撤去、ブロック塀や門扉の解体、庭木の撤去、駐車場の解体などの付帯工事がある場合には工事日数が増え、その分費用も割高になります。
期間を短縮して少しでも解体費用を抑えたい場合には、家屋内の残置物などを事前に自分で処分しておくと良いでしょう。
残置物の処理についてはこちらの記事を参考にしてください。
この章では、一軒家を解体するメリットを紹介します。
国土交通省の定めた「経済的耐用年数」によると、建物が経済的に使用できる最大の期間は新築後20〜25年といわれています。
そのため、新築後20〜25年経過した家は一般的に耐震強度が低いといわれていて、不動産業者はこれらの不動産の建物価値を0円と査定することが多くなります。
また、日本の多くの一戸建て住宅は木造建築ですが、減価償却の計算に使われる法定耐用年数は22年となっています。
そのため、中古の木造住宅は法定耐用年数を超えると価格が大幅に下がる傾向にあるほか、最新の耐震基準を満たしていないと判断された家は住宅ローン控除などが適用されなくなり、地震保険も高額になります。
このような理由から、状態が良い住宅や古民家など希少価値が高い住宅以外の場合は、解体して更地にした方が売却しやすくなるといわれています。
建物を売却する際には、売主側に「契約不適合責任」が発生します。
契約不適合責任とは、建物を売却した後に買主が知らされていなかった問題が生じた場合には、売主が責任を問われる制度です。
建物が古い場合は建物の構造的な劣化などのほか、シロアリの食害被害などが発覚する可能性があり、このような場合も契約不適合責任を問われる場合もあります。
そのため、契約不適合責任を問われる可能性が少しでもある場合には、建物を解体して更地にしてから売却した方が安心です。
土地の売却時には古い建物を解体して更地にしてから売却した方が早く売れる可能性がありますが、メリットだけではなくデメリットも存在しています。
この章では、一軒家を解体するデメリットを紹介します。
一軒家を解体するためには、最低でも100万円程度の費用がかかるのが一般的ですが、土地の価格に建物の解体費用を上乗せして売却するのは簡単なことではありません。
そのため、買い手がついていない状態で解体工事を行う場合には、売主に解体費用などの費用負担がかかります。
人が居住するための住宅用地には、固定資産税が最大で1/6、都市計画税が1/3になる特例措置があります。
しかし家を解体するとこれらの特例措置が受けられなくなるため、固定資産税や都市計画税が従来の3〜4倍、最大で6倍になることもあります。
家を解体してすぐに土地を売却することができれば大きな問題にはなりませんが、長期間売れ残ると税負担が重くなるデメリットがあります。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
建物を新築する際には建築基準法などで定められた基準を満たす必要があり、建築工事に着手する前に都道府県や市などの担当部署に必要な書類を提出し、審査を受けなければなりません。
しかし法改正により既存の土地に新しい建物を建築することができない場合は売却が困難になるため、建物を解体する前に現行の法律で再建築が可能かどうかを確認しておくことが重要です。
建物の解体工事の工事費は建物の広さや構造だけで決まるわけではなく、立地条件や周辺環境なども解体費用を左右する大きな要素になります。
例えば解体対象の住宅が住宅密集地や狭小地、傾斜地などに建っている場合は重機による解体作業が困難になる可能性もあるため、職人が手壊しで作業を行います。
また、解体作業で発生する廃材の量や種類なども解体費用に影響するため、見積もり書の作成の際は現場ごとに現地調査を行い、さまざまな状況を考慮した上で解体費用を算出します。
一軒家の解体費用の内訳は解体業者によって若干異なりますが、大きく分けると次のようになります。それぞれの費用について詳しく見ていきましょう。
建物の解体費用は総費用の大部分を占めるもので、主として作業員の人件費にあてられます。そのため、強度があって壊しにくい建物ほど費用が高額になります。
一般的には木造よりも鉄骨造、鉄骨造よりも鉄筋コンクリートの解体が高額になるといわれており、都市部になるほど相場が上がる傾向にあります。
また、解体する建物のほか、倉庫やブロック塀などの付帯部分を解体する際の付帯工事費用も別途かかることがあります。
仮設費用には足場養生費などが含まれ、解体工事の際の近隣対策に必要な費用を指します。
解体工事前には解体する建物の周囲を養生シートと呼ばれる防音シートで覆いますが、周囲への埃やゴミの飛散防止をはじめ、騒音トラブルを防ぐためにも不可欠な作業となります。
解体作業で発生した瓦や木材、コンクリートなどの廃棄物を処分するための費用を、廃材処理費用と呼びます。
廃材処理費用は解体費用全体の中で本体の解体費用の次に高額になるため、廃材処理費用を抑えることが全体のコストダウンにつながります。
廃材処分費用については、以下の記事を参考にしてください。
解体工事終了後、次の土地活用方法に合わせた方法で整地を行います。
整地状態が良ければ売却や再建築の際にスムーズに話が進みますが、整地方法次第で土地の見栄えや売却価格が大きく変わってしまうこともあるため、事前に整地方法について確認しておく必要があります。
解体工事全体にかかる費用以外には、以下の費用があります。
解体工事の際にはさまざまな届け出が必要になりますが、その中でも特に大切なのが「建物滅失登記」です。
建物滅失登記は解体工事終了後に施主である発注者自身が自治体に届け出を行う必要があり、届け出には書類代などの費用がかかります。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
また、解体業者に日用品処分を依頼する際には産業廃棄物扱いとなるため、別途費用がかかります。
これらに必要な費用が見積書に含まれているかどうかについては、契約前に解体業者に確認しておく必要があります。
解体工事には費用相場がありますが、現場の状況や条件によって費用が高額になることがあります。
そこでこの章では、解体工事が高額になる原因について紹介します。
建築物の解体工事を行う際には、地中に埋まっている基礎や設備配管、浄化槽なども撤去します。
その際、解体作業中に現場調査の際にはわからなかったコンクリートの塊や建築廃材、井戸などの地中埋設物が見つかることがあります。
これらの地中埋設物を地中に残したままにしておくと、土地を売却する際や新築住宅を建てる際に障害となることが多いため、撤去が必要となります。
この場合には追加で撤去作業を行うことになるので、解体費用が高額になります。なお、地中埋設物の撤去費用の目安は概ね次のようになります。
地中埋設物の種類 | 撤去費用の目安 |
木くず | 5,000円/㎥~ |
石膏ボード | 12,000円/㎥~ |
レンガ | 20,000円/㎥~ |
タイル | 25,000円/㎥~ |
コンクリートガラ | 12,000円/㎥~ |
瓦 | 20,000円/㎥~ |
古い建物の場合は建物の建材にアスベストが含まれている可能性があり、解体工事の前にアスベスト調査やアスベスト除去工事が必要になります。
2020年にはすべてのアスベスト含有建材が使用できなくなりましたが、2006年以前に建築された建物の場合は、建物や塗料にアスベストが含まれている可能性があります。
このような場合はアスベストの危険度レベルに応じて特別な方法でアスベスト除去工事を行う必要があり、解体費用以外に追加費用がかかります。
建物にアスベスト建材が使用されている場合の解体工事の方法については、こちらの記事を参考にしてください。
庭の大きな木を撤去する場合も、追加費用が発生します。
撤去費用は小さな木であれば1本あたり5,000〜8,000円程度で撤去できますが、幹回りが50センチを超える大きな木の場合は、1本あたり30,000円以上かかることもあります。
また、庭木の本数が多い場合は、木の本数に応じた撤去費用がかかります。
現場周辺の道路幅員や敷地の間口が狭い場合には、小型重機の使用や手作業での解体が必要になるため、解体費用が割高になります。
また、敷地と前面道路との間に大きな高低差がある場合も、同様の理由で解体費用が割高になります。
隣接する建物との距離が近い場合は、通常の足場ではなく狭小地用の足場を使用します。その際には防音パネルなども設置するため、費用が割高になります。
解体工事は工事終了後に残るものが何もないので、できるだけ安く済ませたいと思うのが多くの人の本音ではないでしょうか。
この章では、一軒家解体の費用を抑える方法を紹介します。
解体工事に関する補助金制度というものは、残念なことに今のところはありません。
しかし自治体によっては費用の一部を支援してくれる制度を設けている場合もあるので、各自治体のホームページなどで一度確認してみると良いでしょう。
特に空き家などの長期にわたって人が住んでいないような家屋に関しては、特定空き家を対象とした補助金や助成金を受給できる可能性もあります。
また、空き家解体補助金が出る都道府県もあるので、管轄の自治体に問い合わせてみることをおすすめします。
なお、家屋の解体に際して補助金や助成金が受けられる要件としては次のようなものがあります。
ただし1年以上空き家の状態でも居住可能だと判断された場合は、解体費用の補助金を受けられないこともあります。
自治体によって要件や判断基準が異なるので、一度窓口に行って相談してみると良いでしょう。
解体工事に関する補助金については、以下の記事を参考にしてください。
解体する建物の中に残された不用品などの処分を自分で行えば、解体費用を大幅に削減することができます。
解体費用の中で廃材処理費が占める割合が高いことは前述しましたが、家具や家電をはじめとする残置物が多いと、その分解体費用が高額になります。
また、一般ゴミなどの処分も合わせて解体業者に依頼をする場合は、産業廃棄物処理代が別途請求されます。
そのため、リサイクルショップやインターネットオークション、不用品回収業者などを利用して、できるだけ工事前に不用品を処分しておくと良いでしょう。
不用品の処分方法については、以下の記事を参考にしてください。
解体工事費用を安く抑えるためには、複数の業者から相見積もりを取ることが不可欠です。
解体工事は同じ工事内容であっても、各社の利益率の設定が異なっていたり、作業計画の違いなどにより価格が異なることがあります。
そのため、相見積もりを行なって一番良い条件で解体作業を行ってくれる業者を選定することが大切です。
しかし単にトータル金額の比較だけではなく、作業計画の良し悪しや施工品質、担当者の対応などを十分に比較検討して総合的に判断するようにしてください。
解体費用を自己資金で捻出できない場合には、各地方銀行などで取り扱っている「空き家解体ローン」を利用する方法があります。
空き家解体ローンとは空き家の解体資金に利用できるローンですが、利用条件のハードルが低く、担保や保証人は不要かつ比較的低い金利となっています。
具体的な金利や借入額の上限などは金融機関によって異なるため、最寄りの銀行などに問い合わせてみる事をおすすめします。
この章では解体工事の際に注意すべきことを3つ紹介します。
解体業者から見積もりを取得する際は、1社だけの見積もり書では適正な価格、適正な工事内容を判断できません。
そのため、2〜3社程度の解体業者から相見積りをとり、各社の見積もり書を比較検討することをおすすめします。
比較検討する際には、解体する建物以外にも付帯部分の解体費用や残置物処理費用をはじめ、追加費用の有無を必ず確認してください。
特に追加費用に関しては、地中埋設物が発見された場合やアスベストが発見された場合の取り扱い方について、事前に確認しておくことが非常に重要です。
悪徳業者の中にはこの追加費用の項目を契約書や見積もり書に記載せず、契約を結んでから法外な追加請求を行う業者も存在しています。
そのような被害に遭わないためにも、比較検討する際は解体費用の合計金額だけではなく、見積もり書の各項目が詳細に記載されているかを確認するようにしてください。
また、事前に優良業者の選び方を知っておくことにより、業者選定の際に正しい業者選びができるでしょう。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
解体工事終了後は1ヶ月以内に「建物滅失登記」を行う必要があり、万が一忘れてしまった 場合は10万円以下の罰金刑に処されます。
また、建物滅失登記を忘れたままにしてしまうと、解体後の建築確認申請が認可されなかったり固定資産税がかかり続けることになるため、必ず期日までに手続きをするようにしてください。
建物滅失登記の申請は土地家屋調査士に依頼しますが、申請方法が比較的簡単であるため、ご自身で行うことも可能です。
なお、建物滅失登記の手続きをする際には、解体業者が発行した建物取り壊し証明書や解体業者の印鑑証明、資格証明書などが必要になるため、必ず解体業者から書類を受け取っておくようにしてください。
建物滅失登記の具体的な内容や流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。
一般的に古い建物は残しておくよりも解体し、更地にした方が売却しやすいといわれています。しかし建物の解体後に必ず土地が売れるわけではありません。
築年数が経過していたとしてもメンテナンスがしっかりされていた住宅や歴史的価値が高い古民家などは、状況次第では建物を残したままのほうが売れる場合もあります。
また、売却価格に解体費用を上乗せすると売れなくなってしまうこともあるため、土地の売却を前提として解体工事を行う予定の方は、建物を解体する前に複数の不動産業者に相談をしてみた方が良いでしょう。
解体工事にかかる費用についてはある程度の相場はあるものの、立地条件や周辺環境などによって相場と大きく価格差が生じてしまうことがあります。
そのため、解体工事を行う際には、どんな立地条件でどれくらいのコストがかかるのかを解体業者に個別に判断してもらう必要があります。
複数の解体業者に現地を確認してもらった上で、見積もりを依頼することが不可欠です。その際は、解体工事では単に価格の安さだけでなく、他の項目も合わせて総合的に判断するようにしてください。
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