「解体工事を検討しているけど流れが分からない」という方も多いと思います。
解体工事は建物を解体して土地を更地にする工事ですが、費用などもかかるため工事前には解体工事の流れの全体像を把握しておきたいものです。
そこで今回は、解体工事の流れを紹介します。
また、解体工事に際して自治体などに申請が必要な書類や、注意点なども解説しますので、ぜひ参考にしてください
目次
初めて解体工事を行う場合には、まずは何から手をつければ良いのかわからないという方がほとんどでしょう。
そこでこの章では、解体工事を行う前の確認事項を紹介します。
建物を解体する際には、通常「油圧ショベル」と呼ばれる重機を使用するため、重機を現場に搬入するための搬入経路を確保する必要があります。
また敷地内に重機の作業スペースがあるかどうかや、廃材を積み込むためのトラックの駐車スペースがあるかどうかも重要になります。
そうしたスペースが確保できない場合には手作業での解体になってしまうため、解体費用が高額になってしまったり、工期が長くなってしまったりすることがあります。
重機の作業スペースの有無やトラックの搬出入経路の確保は施主にとっても重要な部分になるので、事前にしっかりと確認しておきたいところです。
解体工事で発生した廃材は産業廃棄物と呼ばれ、条例や法律によって適切に処理することが定められています。
また自治体によって処分方法が異なるため、解体工事を行う際には事前に確認しておくことが大切です。
一般的には中間処理施設や最終処分場に搬出することになるので、自分で残置物を処分する場合も含めて、具体的な流れを把握しておくと良いでしょう。
この章では、解体工事の大まかな手順や工程を説明します。
はじめに工事を依頼する解体業者の選定を行いますが、解体業者を選ぶ際にはどんな点に注意する必要があるのかを紹介します。
解体業者に見積もりを依頼するにしても、業者が実際に解体する建物や立地条件などを確認しなければ正確な見積もりを出すことができません。
そのため、まずは解体業者に現場の立ち合い調査を依頼します。
立ち合い調査を依頼すると、業者は建物の面積、構造、劣化具合の他に周辺環境や重機・廃材などの搬出入経路を確認します。
優良な業者であるほど、細かい部分まで解体工事に必要な項目を丁寧にチェックするので、立ち合い調査の際に業者がどのような点をチェックしているのかを確認しておくと良いでしょう。
また、見積もりや立ち合い調査を依頼する際には、1社のみだと他と比較することができないので、必ず複数の業者(3社程度が望ましい)に依頼するようにしましょう。
複数の業者から見積もり書が提出されたら、各社の見積もり書の内容を比較・検討します。
その際、単に金額の高い安いのみで判断するのではなく、どのような作業を行うのか、工事項目に漏れがないか、見積もり書の内容がわかりやすく記載されているかといった点まで細かくチェックすることが大切です。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
複数の業者の見積もり書の内容を十分に比較・検討したら、最も信頼できそうな業者を1社選んで契約します。
その際には口頭ではなく、必ず書面で工事請負契約書を取り交わすことが重要です。
悪質な業者ほど書面で契約書を取り交わすことを嫌がる傾向があるので、注意が必要です。
解体工事業者を決定して業者と工事請負契約を締結したら、実際に工事を行うにあたっての事前準備をします。
ここでは、解体工事に着手する前の事前準備について紹介します。
見積もりを作成するにあたって業者はすでに現地を確認していますが、詳細な施工計画を立てるために改めて建物の事前調査を行います。
ここでは解体工事の具体的な作業手順を決定するにあたっての注意点などを把握すると共に、隣地との境界杭を確認して、近隣とのトラブルを回避するための対策などを検討します。
また重機及び廃材の運搬車両の搬出入経路や、廃材の仮置き場の決定などもここで行います。
境界杭の見つけ方の詳細は、こちらの記事をご覧ください。
解体工事に着手する前には、必要な申請や手続きを行います。
解体する建物の床面積の合計が80㎡以上になる場合には、建設リサイクル法に基づく届け出が必要になります。
その場合(ほとんどの家屋が該当します)には、工事内容などを記載した書面を解体工事着工の7日前までに施工箇所を管轄する市区町村の担当窓口に提出しなければなりません。
(届出先は都道府県知事となります)
多くの場合には解体業者が代行して行っていますが、届出の義務はあくまでも解体工事を依頼した発注者(施主)にあるので、注意が必要です。
現場が狭小地の場合などで、解体作業中に道路上に廃材の搬出車両等を駐車しておく必要がある時には、所轄の警察署に道路使用許可申請書を事前に提出して許可を受けなければなりません。
なお、申請書の提出は工事業者が行います。
解体工事中には、騒音や振動、粉塵などが発生するばかりでなく、工事車両の駐停車などで近隣住民に迷惑をかけてしまいがちです。
そのため何の挨拶もしないままいきなり工事に着手してしまうと、トラブルの元になります。
したがって解体工事着工前には近隣住民に対して挨拶を行い、工事の日程や概要などを説明して、理解と協力を得ておくのが一般的です。
また工事が大がかりになる場合には、近隣住民を集めて説明会を開催することもあります。
近隣挨拶についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。
解体工事に着手する前に絶対に忘れてはならないものには、電気、ガス、電話、インターネット、ケーブルTVなどの使用停止手続きがあります。
これらを撤去しないまま解体工事を行うと、非常に危険な場合があります。
遅くても工事の1週間前までには各契約会社に連絡しましょう。
尚、水道に関しては、解体工事中に業者が散水などのために使用するケースが多いので、事前に業者と打ち合わせしておくようにしましょう。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
解体する建物の中に家具や家電、日用品、雑貨などの不用品が数多く残っていると、それらの処分も解体業者が行うことになるので、高額な費用がかかります。
解体業者に日用品の処分を依頼した場合には、産業廃棄物扱いとなってしまうので廃棄費用が割高になるためです。
したがって、不用品を自分で処分することで解体工事費用を節約することができます。
不用品の処分方法についての詳細はこちらの記事をご覧ください。
解体工事の事前準備が終わると、いよいよ解体工事に着手します。
ここでは解体工事の工程を紹介します。
解体工事は高所作業を伴うので、作業を安全に行うために建物の周囲に足場を設置します。
また足場を組む際には周囲に粉塵が飛散しないように、足場に養生シートを掛けて建物を覆います。
足場や養生シートの設置は、事故を防いで近隣からのクレームを避ける上で非常に重要な工程といえます。
建物の解体工事を行う際には、法令で分別解体を行うことが義務付けられています。
そのため建物本体を解体する前に、石膏ボードや土壁などの天井材や壁材、アルミサッシ、木製建具、住宅設備機器、屋根材(瓦等)、室内の不用品などを職人の手作業で撤去し、それらを分別して搬出していきます。
建物内部の解体と撤去が終わったら、重機を使用して建物本体の解体作業に着手していきます。
しかし建物の立地条件や周辺環境によっては、引き続き手作業で解体しなければならない場合もあります。
騒音やほこりが発生しやすくなるため、この工程が最も近隣からのクレームを受けやすくなります。
したがって解体業者には、散水しながら丁寧に解体していくことが求められます。
建物の解体が終わると法令に則って廃材を処分し、敷地の整地作業を行います。
その際の大まかな手順は次のようになります。
建物を解体すると木材のみでなく、コンクリートや鉄筋、鉄骨、アルミなど様々な廃材が発生します。
それらは部材ごとに分別して、それぞれの処分場まで運搬しなければならないことになっています。
解体工事で発生する廃材の廃棄処分には、マニフェスト制度という廃棄の流れを確認する制度があるので、廃棄物の処分が適切に行われたかどうかはマニフェスト票(産業廃棄物管理票)で確認することができます。
したがって不法投棄などのトラブルを回避する上でも、廃棄物の処分が適正に行われたかどうかをマニフェスト票で確認しておくことをお奨めします。
またマニフェスト票は建物滅失登記申請の際にも必要になることがあるので、解体業者から受け取っておくようにしましょう。
解体工事の際には、地中に埋まっている設備配管や浄化槽なども撤去しますが、中にはコンクリートの塊や古い井戸などの予期せぬ地中埋設物が出てくることがあります。
これらを地中に残したままにしておくと、土地を売却する際や新たに建物を建てる際に問題となってしまうので、併せて撤去しておく必要があります。
したがって解体工事を行う際には、地中埋設物の有無をきちんと確認しておくことが大切です。
古い井戸が見つかった場合については、こちらの記事をご覧ください。
以上の全ての作業が終了したら、最後に土地を平らに整地して完成となります。
整地の状態によって土地の価値や、すぐに建物を建てられるかどうかが変わってしまうので、決して軽視することはできません。
また解体工事終了後の土地の利用目的がすでに決まっている場合には、利用目的に応じた整地作業を行っておくことで、土地を有効に活用しやすくなります。
整地については、こちらの記事をご覧ください。
解体工事後の整地までが終了したら、引き渡しをし一連の工事の完成となります。
ここでは契約書の内容通りにきちんと施工されていることを確認すると共に、整地の状態なども併せて確認します。
また、重機を使用する際や車の搬出入の際に、近隣の住戸や道路などを傷つけていないかどうかや、ゴミや土などが飛散していないかどうかを確認しておきましょう。
万一何かあれば業者からの報告があるのが当たり前ですが、何の報告もなく後からトラブルがあったことを知った場合には、必要な対応をすることができなくなってしまいます。
そして特に問題がないようであれば、業者に工事代金の支払いを行います。
ここでは工事完了後の確認事項について紹介します。
解体工事終了後1か月以内には、不動産登記法により定められた建物滅失登記を行わなければなりません。
建物滅失登記の申請は、土地家屋調査士や司法書士が委任を受けて行うことが多い様ですが、ご自身で行うことも可能です。
万一滅失登記の申請を怠った場合には、10万円以下の過料に処すると定められているので、忘れずに行うようにしましょう。
また滅失登記を行わなかった場合には、固定資産税の支払い義務が残ったり、解体後に住宅を新築しようとしても建築確認申請がおりなかったりしてしまうので、注意が必要です。
尚、建物滅失登記を行う際には、解体業者が発行する建物取り壊し証明書や解体業者の印鑑証明書、資格証明書の他に、ケースによってはマニフェストなどの書類を求められることがあります。
これらの書類は必ず解体業者から受け取っておくようにしましょう。
滅失登記についてはこちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
この章では、解体工事にかかる費用の目安を紹介します。
建物の解体費用は建物の構造や建坪(延べ床面積)によって大きく変わります。
ただし他の建築工事とは異なり、使用する建築資材がほとんどなく、職人の手間賃についても業者による差が少ないため、同じ条件であれば業者による価格差が少なくなる傾向があります。
建物の構造ごとの坪単価(床面積1坪あたりの解体費用)の目安は次のようになります。
建物の種類(構造) | 坪単価 |
木造 | 3万円/坪~4万円/坪 |
鉄骨造 | 4万円/坪~6万円/坪 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 5万円/坪~8万円/坪 |
上記の表により、延べ床面積30坪の一般的な木造住宅の場合、解体費用の目安は90万円~120万円程度になります。
解体費用についての詳細はこちらの記事をご覧ください。
ここでは解体工事費用の支払い方法を紹介します。
解体工事の費用の支払い方法は解体業者によって異なり、一般的には次の3つのパターンがあります。
これらの他に、業者によっては一括前払いを求められる場合がありますが、そのような場合には注文者のリスクが非常に高くなるので、避けた方が良いでしょう。
解体工事に着手する前または契約時に半額を着手金として支払い、解体工事終了後に残金を支払うパターンです。
お互いのリスクを公平にするという意味合いがあり、最もよく見られる支払い方法となります。
着手金、中間金、残金の3回に分けて工事代金を1/3ずつ支払う方法になります。
住宅の新築工事などでは一般的な支払い方法で、解体工事費用が高額になる場合にこのような支払い方法を解体業者から求められることがあります。
解体工事費用があまり高額でない場合には、解体工事完了後に一括で支払う方法がとられることがあります。
注文者(施主)にとっては、最も条件の良い支払い方法といえます。
解体工事の支払いタイミングについての詳細はこちらの記事をご覧ください。
解体工事には決して安くない費用がかかるので、失敗はできるだけ避けたいものです。
そのためには事前に作業手順や工程などを良く理解して、それぞれの工程ごとの注意点を十分に把握しておくことが重要になります。
本記事では解体工事の流れを解説すると共に、解体業者の選定方法や必要な手続き、申請事項、注意点なども詳しく紹介しているので、参考にしていただければ幸いです。
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