築年数が経過し老朽化が進んだ家が建っている土地を売却しようと思っても、思うように買い手が見つからずに長期間売却できないケースが少なくありません。
そんな時には、売却を依頼した不動産業者から古家を解体して更地にすることをすすめられることがあります。またまれに更地にした方が土地を高く売却できる場合もあります。
そして中には、「土地の購入後に家を新築したいから、購入する前に古家を解体して更地にしてほしい」と購入希望者から言われることも少なくありません。そんな時には不動産業者に解体工事を依頼するケースが多くなります。
そこで本記事では、不動産業者に解体工事を依頼する場合の注意点について紹介します。
目次
家の解体工事の依頼先にはハウスメーカーや工務店、解体業者、不動産業者などがありますが、解体後の土地の活用方法によって依頼先が変わってくることが多いと思います。
家を建て替えるのであればハウスメーカーや工務店に依頼するのが一般的ですが、土地を売却するための古家の解体であれば不動産業者に依頼するケースが多いのではないでしょうか。
しかしハウスメーカーや工務店、不動産業者が自社で解体工事を行うことはほとんどなく、下請けの解体業者に工事を依頼したり、つきあいのある解体業者を紹介したりすることがほとんどです。
そのため、このような流れや注意すべき点を事前によく知っておくことが大切です。
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不動産業者は全国に約34万社あるといわれています。
一般的に不動産業者といわれている不動産業界を大別すると、不動産売買、不動産仲介、不動産管理、不動産賃貸に分かれていて、そのすべてを総称して不動産業といいます。
さらに大きく分けると、土地や建物の売買を主に取り扱っている不動産業者と、アパートやマンションなどの賃貸契約の仲介業務をメインにしている不動産業者の2つに分けることができます。
日常どんな業務を行っているのかによって、同じ不動産業者でも全く異なるといえるでしょう。
不動産業者に解体工事について相談するのであれば、土地や建物の売買を主に取り扱っている業者に相談することになります。
そして解体工事を行うためには、解体工事業の登録または建設業の許可などをはじめとする様々な許認可が必要になるため、不動産業者が自ら家屋の解体工事を行っていることはほとんどありません。
そのため、家屋の解体工事を依頼された不動産業者は、日頃から取引のあるなじみの解体工事業者を紹介するのが一般的な流れです。
そして解体業者による解体工事が終了してから、不動産業者が土地の売買や土地活用の提案を行います。
不動産業者に解体工事を依頼するメリットは、不動産の専門家の立場から売却が容易になり、かつ高額で売却するためのアドバイスを受けられることです。
また、希望すれば土地の有効活用について提案してもらうこともできます。
ここでは、不動産業者に解体工事を依頼するメリットを詳しく紹介します。
不動産業者に家屋の解体工事を依頼する最大のメリットは、解体後の土地の売買や活用方法についてまとめて相談できるという点です。
家屋の解体工事後に土地の売却を検討する際は、植栽や門扉、塀、井戸などは残した方が良いのか撤去した方が良いのか、盛り土は必要かどうかなど、解体の範囲や必要な工事を相談することができます。
また、家屋を解体した後は月極駐車場として活用する、資材置き場や家庭菜園として賃貸する、などといった土地活用法を提案してもらうこともできるでしょう。
こうしたアドバイスは、地域のことをよく知っている不動産業者でなければ難しいといえます。
不動産業者と日頃からつきあいのある解体業者であれば不動産業者もその会社の実態を十分に把握しているので、工事中に解体業者の過失によるトラブルや事故が発生する可能性は低いといえるでしょう。
また、解体業者の方でも依頼者との間で何らかのトラブルを起こした場合にはその後顧客を紹介してもらえなくなってしまうので、より丁寧な仕事が期待できます。
不動産業者に解体工事を依頼する場合にはメリットばかりではありません。デメリットもあるので、メリットとデメリットをよく考えて検討することが大切です。
この章では不動産業者に解体工事を依頼する場合のデメリットを紹介します。
不動産業者が自社で解体工事を行うことはほとんどないといえます。
通常不動産業者は解体工事に必要な許認可を持っていないので、自社で解体工事を請け負うことはできません。
そのため、解体工事を依頼された場合には日頃から付き合いのある解体業者に工事を依頼します。
ハウスメーカーや工務店と契約する場合でも直接解体工事を行わないことがほとんどですが、不動産業者に依頼する場合には契約書の取り交わし自体も不動産業者から紹介された解体業者と直接行うことになります。
その際には解体工事費の1~2割程度の中間マージン(紹介手数料)が発生するので、自分で解体業者を探して契約するよりも高くなってしまうことがほとんどです。
中間マージンは解体業者から不動産業者に直接支払われることになりますが、ハウスメーカーや工務店と契約する場合とは異なり、不動産業者が解体工事の段取りや施工管理を行うことはほとんどありません。
そのため、実質的には工事は解体業者に任せっきりになるといえます。
不動産業者は建築のプロではないため、担当者に伝えた要望が解体業者にきちんと伝わっているとは限りません。
本来残しておきたかったものが解体されてしまったり、建物と一緒に取り壊したかったものが残ってしまったりすることも決して珍しくありません。
たとえ不動産業者に伝えたことであっても、重要なことは契約の当事者である解体業者の担当者にきちんと伝えておくことが大切です。
事前に三者間で打ち合わせをする機会を設けるなど、解体業者の担当者との意思疎通をはかることが欠かせません。
土地を売却するための解体工事の場合は家を建て替えるための解体工事とは異なり、既存の建物を解体して更地にするためだけのものです。
そのため、解体工事を不動産業者に依頼してマージンを支払うだけの価値があるかどうかをよく見極める必要があります。
また、契約する相手はどのみち解体業者になるので、インターネットなどを使って自分で解体業者を探すこともそれほど難しいわけではありません。
ただし業者の信頼度の見極めが重要になるので、この点には注意する必要があります。
自分で業者を探して直接発注することを「分離発注」といいますが、分離発注することで解体工事費用の1~2割程度の中間マージンをカットすることができるでしょう。
ほんのわずかな手間を惜しまなければ、分離発注することで建物の解体費用を削減できます。
解体工事を直接解体業者に依頼する場合には、必ず数社から相見積りをとって内容をよく比較検討することが大切です。
その際には、価格の安さだけで業者を選ぶことがないようにしましょう。安い金額を提示する業者の中には、不法投棄などの違法行為を行っている悪徳業者も存在しています。
特にあまりにも見積り金額が安い場合には注意が必要です。
また、解体工事に必要な許認可を取得していることが最低条件ですが、担当者の人柄やコミュニケーション能力なども重要な判断基準となります。
その他では解体の時期や工期、施工実績、会社の規模、評判などを十分に考慮した上で、信頼できる業者に依頼することをおすすめします。
優秀な解体業者の見つけ方については、以下の記事を参考にしてください。
家屋を解体した場合は解体した建物の固定資産税や都市計画税はかからなくなりますが、土地については住宅用地の軽減の特例が受けられなくなります。
土地に住宅が建っている間は「小規模住宅用地の特例」が適用されるので減税措置を受けることができます。
しかし住宅を解体した場合には減額が適用されなくなってしまうので、土地の固定資産税は最大で6倍になり、都市計画税についても最大で3倍になります。(東京都:固定資産税・都市計画税)
建物の減少分と土地の増額分の差額がどうなるのかはそれぞれの税額次第ですが、更地にした場合の増額分の方が大きくなる場合には、解体してから土地売却までの期間が長引くとその分の負担が大きくなるので注意が必要です。
一方、土地を売却するために行った解体工事であれば、解体費用を売却経費にできます。この結果、売却により発生する利益が減るので、税金を安くすることが可能になります。
すなわち個人が土地を売却する場合には発生した利益に対して譲渡所得税がかかりますが、譲渡費用(解体費用等)を差し引いて利益を計算することができるようになります。
「譲渡所得税」=(「土地を売却した金額」−「取得費」−「譲渡費用」)×「税率」 |
「取得費」とは売却した土地を取得した時の代金、仲介手数料、取得後の改良費などの合計額のことをいい、「譲渡費用」は土地を売却するために支払った費用のことです。
譲渡費用には解体費用も含まれるため、節税対策として有効になるといえるでしょう。
不動産業者が解体業者を紹介する場合には、その解体業者には一定の水準が保たれているといって良いでしょう。
なぜなら悪質な解体業者を紹介した場合には依頼者からの信頼を失い、本業である不動産売買の機会まで失ってしまうことにもなりかねないからです。
しかし解体業者を不動産業者から紹介してもらうことにはデメリットも存在します。
解体工事を不動産業者に依頼する場合のメリットとデメリットをまとめると次のようになります。
メリット | ・解体後の土地の売買や活用方法についてまとめて相談できる ・解体業者を自分で探す手間がかからない ・悪徳業者につかまる心配がほとんどない |
デメリット | ・不動産業者のマージンで解体費用が割高になっていることがある ・要望がきちんと伝わらない場合がある ・解体業者の担当者と相性が合わない場合がある |
解体工事を不動産業者に依頼する際には、そのメリットとデメリットをよく理解した上で決定することが大切です。
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