災害後の空き家解体費用は1.5倍!台風や大雨を待ってはいけない理由

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災害後の空き家解体費用は割高に!台風や大雨を待ってはいけない理由

古い空き家を解体しようと思った時に、「台風などの自然災害で少し家が壊れてから解体すれば、解体費用を節約できるのでは?」と思っている方が少なくありません。

しかし災害後の解体費用は、通常よりも高額になってしまうのが一般的です。

本記事では災害後に行う解体工事のリスクや、災害発生前に解体工事を行うべき理由などについて詳しく解説します。

通常時の空き家解体の費用相場

通常時の空き家解体の費用相場

通常時の空き家の解体費用は家の面積や建物の構造、立地条件、周辺環境などによって異なりますが、一般的には100万円~200万円程度になることが多くなります。

また、門扉やブロック塀、物置、植栽、カーポート、地中埋設物などの有無によっても費用が大きく変わります。

しかし台風や大雨などによる被害を受けた住宅は、解体費用が安くなるどころか解体作業に時間がかかるため、費用が割高になってしまうことが少なくありません。

そのため、災害による被害を受ける前に行うのが、解体費用を安く抑える秘訣です。

災害後(台風・大雨)の空き家解体費用は1.5倍かかる

災害後(台風・大雨)の空き家解体費用は1.5倍かかる

空き家の解体費用は地域ごとに相場が異なる上に、さまざまな要因によって影響を受けます。

また、災害発生後の空き家解体費用は通常時の1.5倍かかるともいわれています。

この章では、災害後の空き家解体費用が高額になってしまう理由を紹介します。

廃棄物の分別に時間がかかる

従来の解体工事では、建物を一気に解体する「ミンチ解体」が主流でした。

ところが2000年に制定された「建設リサイクル法」により、解体工事を行う際には廃棄物の再資源化と再利用を行うこととなりました。

それにより、廃棄物を種類ごとに分別しながら計画的に解体工事を行うことが義務付けられました。

そのため、災害に遭った建物を解体する場合には分別に手間や時間が通常よりも多くかかります。

これは災害によってさまざまな材料や部品、泥などが混じりあってしまうためで、通常の解体工事よりも時間がかかり、人件費が高くなってしまうのです。

需要が増える

災害に伴う解体工事は周辺エリアで一度に集中して発注されることが多いため、工事に着手できるようになるまで時間がかかることがあります。

例えば2019年(令和元年)に東日本に甚大な被害をもたらした台風15号及び19号の被災地では、「いつ解体してもらえるのかわからない」といった不満の声が多くありました。

損壊家屋の解体・撤去等は原則として所有者の責任で行われるものですが、速やかに解体・撤去作業を行う必要があります。

そのため、千葉県などの自治体などでは、台風の際に公費解体費用償還(家屋所有者等が自費で解体・撤去した場合の費用を市町村が償還するもの)が行われた事例があります。

それでも千葉県で上記による解体作業等が完了したのは2021年1月末時点と報告されていて、災害発生時から1年以上かかっています。

公費解体があるから災害後(台風・大雨)で大丈夫!?

公費解体があるから災害後(台風・大雨)で大丈夫!?

台風や大雨、地震、水害などで被災した家屋は、前述したように自治体が費用を負担して解体工事を行うことがあります。

これを公費解体といいますが、全ての空き家に該当するわけではなく、デメリットも存在します。

公費解体とは?

公費解体とは文字通り行政が公費で被災家屋を解体・撤去する制度で、1995年の阪神・淡路大震災のころから運用されるようになりました。

自治体が家屋の所有者に代わって解体工事の発注から支払いまでを行います。

所有者には金銭的な負担はかかりませんが、工事は原則として申請順に行い、時期の指定はできません。

そのため、いつ工事が行われるのかがわからないのがデメリットであるといわれています。

空き家は罹災証明の対象外

罹災証明書とは、自然災害や火災などによって家屋が被害を受けた場合に市区町村が現地調査を行って被害の程度を認定し、公的に証明する書類のことをいいます。

公的支援を受ける際や保険金を請求する際に必要になるものです。

この罹災証明書の対象となるのは、住家(災害発生時において居住のために使用されている建物)とするのが一般的で、空き家については対象外となります。

住家以外のものについては申請者から被害の届出があった旨を証明する罹災届出証明書が発行されますが、被害の程度は記載されません。

罹災証明書については、以下の記事を参考にしてください。

空き家でない場合も注意点あり

公費解体の対象について、空き家でない場合でも注意点あり

一般的に公費解体の対象となるのは、水害や地震などの自然災害を受けた後、罹災証明書で「全壊」又は「大規模半壊」と判定された家屋になります。

一方で家屋の所有者側からは、様々な質問があがることでしょう。

具体的な例として「ブロック塀は撤去できるのか」「更地にしたら固定資産税が上がるのでは?」「すでに業者に依頼して一部撤去してしまった」などです。

このような場合は、すでに自ら業者に依頼して部分的に解体してしまった場合などに関しては、条件によっては自費解体になってしまうリスクもゼロではありません。

また、同じ豪雨により被害を受けた場合でも、居住地のある自治体によって復旧にかかる費用の補助に差が出た事例もあります。

例えば、「我が家の解体費用は自腹だったのに、隣の町では公費で解体してくれた」というケースです。(NHK:うちは自腹で隣は無料 解体費用は誰が出すの?

公費解体制度を使うかどうかの判断は各自治体に委ねられているため、自治体の判断の差が被災者への支援の差につながるケースは決して少なくありません。

特に公費解体制度は普段からよく使われる制度ではないので、自治体の職員も正確に内容を把握している訳ではありません。

そのため、上記のようなケースが発生する可能性もあります。

空き家は台風や大雨よりも前に解体するのがおすすめ

空き家は台風や大雨よりも前に解体するのがおすすめ

近年の日本では、毎年台風や豪雨などによる重大な自然災害が数多く発生しています。

古くなった空き家を所有しているということは、こうしたさまざまなリスクを負うことになります。

そこでこれらのリスクや、リスクを回避するための補助金制度について紹介します。

近隣被害で賠償責任が発生する可能性あり

台風や大雨などの自然災害により他人に損害を与えてしまった場合には「不可抗力の事故」として扱われ、法律上の損害賠償責任は発生しないのが一般的です。

しかし事前に予想できていた場合などは例外もあります。

屋根材が周囲に飛散するであろうことが予想できた場合、ベランダの小物や鉢植えなどが飛ばされ他人に損害を与えたりした場合は、損害賠償責任が発生する可能性があります。

そのため、事前に危険なものを撤去しておくことが大切です。

空き家解体には補助金制度がある

解体工事を行う際には、いくつかの補助金制度があります。ただし補助金の対象は、主に空き家になっています。

自治体によって要件や名称が異なる場合がありますが、主な補助金の種類には次のようなものがあります。

老朽危険家屋解体工事補助金そのまま放置しておくと倒壊する危険性のある建物に対して、補助金を支給することで解体を促進する目的があります。
危険廃屋解体撤去補助金周辺住民の安全や住みやすい環境を整える目的で、危険があると判断された家屋を対象に、解体工事を促進するための補助金や助成金を支給しています。
木造住宅解体工事費補助事業実際に耐震診断を行って倒壊の危険性が高いと判断された家屋に対して、解体費用の一部を支給する制度です。

解体工事の補助金や助成金を受け取るための条件や注意点に関しては、以下の記事で詳しく説明しています。

空き家について台風前に準備しておきたいこと

空き家について台風前に準備しておきたいこ

空き家の所有者にとって、台風シーズンになると屋根材の飛散や建物の倒壊などで近隣に迷惑を掛けないか心配になることが多いと思います。

そこでここでは、台風前に準備すべきことを紹介します。

火災保険に入る、火災保険の契約内容を確認する

火災保険は火災や爆発だけでなく、台風・竜巻・暴風などの風災被害や水災などにも対応していることが殆どですが、念のため契約内容を再度確認しておくようにしましょう。

特に、保険料を安く抑えるために水災の補償を外していることもあるので要注意です。

また、火災保険に加入していない場合は必ず加入しておくようにしましょう。

飛びそうなものを事前に片付けておく

台風被害で最も多いのが、屋根材や外壁材、庭の樹木などが強風で飛ばされて、近隣に被害をもたらすケースです。

そのため、事前に屋根や外壁の状態を点検し、飛びそうなものが家の周囲にないかどうかを確認しておくことが大切です。

周囲に被害を及ぼす可能性があるものについては、事前にしっかりと対処しておきましょう。

まとめ

台風や大雨で空き家が壊れるのを待つのはリスクが高い・早いうちに解体を

空き家を少しでも安く解体しようとして台風や大雨を待って老朽化が進んだまま放置しておくと、災害後の解体費用は通常の1.5倍になってしまうことがあります。

また、公費解体をあてにして空き家が被災するのを待っていても、対象になる可能性は低いばかりではなく、逆に近隣被害で損害賠償責任が発生する可能性があります。

そのため、台風や大雨で空き家が壊れるのを待つのは、リスクが高くなるだけでほとんど何のメリットもないため、空き家はできるだけ早いうちに解体した方が良いでしょう。

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この記事のライター

亀田 融

東証一部上場企業の不動産・建設会社の建築部門に33年間勤務。 13年間の現場管理経験を経て、取締役事業部長に就任。事業部内で年間1000件以上のリフォーム工事を手掛けるなかで、中立的立場でのコンサルティングの必要性を実感し、独立を決意。現在はタクトホームコンサルティングサービスの代表として、住まいに関する専門知識を生かし、多岐にわたり活躍している。 (保有資格:一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、マンション管理士、JSHI公認ホームインスペクター、インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネジャー、日本不動産仲裁機構ADR調停人)

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