長屋は古くからある日本の伝統的な家屋として知られていますが、居住環境の変化などにより、近年では隣家との間を切り離して新たな居住スペースを作る方も増えています。
しかし長屋を切り離す際はトラブルや注意点も多いため、メリットやデメリットを事前によく把握した上で切り離しを行うことが重要です。
そこでこの記事では長屋を切り離す方法や手順をはじめ、注意点やメリットやデメリットを紹介します。
目次
長屋とは2戸以上の建物が連結している建物のことを指し「テラスハウス」や「連棟住宅」と呼ばれることもあります。
住居の壁が隣接していることが最も大きな特徴ですが、各居住スペースには玄関や階段があり、一般的な共同住宅とは異なります。
また、基本的に長屋は一階建てですが、近年は二階建ての建物も増えています。
関西方面では「文化住宅」と呼ばれることもあり、昔からの日本の伝統的な住居として多くの方に親しまれています。
長屋とよく混同されがちなもので「町屋」と呼ばれるものがあります。
町屋は平家形式で横に長い構造の建物を指しており、主に商家など商業を営むために使われる建物のことをいいます。
また、長屋のような集合住宅ではなく、一軒家として成り立っているのも大きな特徴です。町屋も長屋と同じく、古くから日本の伝統的な建物として親しまれています。
長屋の切り離し工事とは、共有している壁部分を切り離し、一つの住宅として独立させる工事のことを指しています。
共有部分がある以上、隣住民の許可なしに施工を行うことはできず、通常の解体工事よりも手間がかかります。
隣の建物を傷つけずに切り離し工事を行う必要があるため、切り離し工事を行う業者側には高度な技術が必要です。
長屋の切り離し工事は「切り離し解体」とも呼ばれ、一般的な解体工事とは異なり、建物の一部分のみを解体する工事です。
隣の家と同じ壁を共有していることからも切り離し工事はとても難しく、隣家の建物を傷つけることのないように慎重に工事を行う必要があります。
また、長屋の切り離し工事を行う際は事前に「残す柱と切っても良い柱」と「補修箇所」を事前に調べておくのが重要です。
万が一重要な柱を切ってしまったり傷をつけるような事があると、建物の耐震性や強度に影響してしまう可能性もあります。
長屋切り離しにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
長屋の場合はリフォームやリノベーションを行う際に隣家に干渉してしまい、自分の希望通りに改築ができないケースが多くあります。
しかし切り離しを行うことで隣家に干渉することがなくなり、自由にリフォームやリノベーションを行う事ができるようになります。
切り離し後は自由に改築が可能であるため、自宅の改築を検討している方にとっては大きなメリットになるといえるでしょう。
長屋を切り離した後に改めて基礎部分を作ることで、住宅の強度がアップします。
特に長屋は古くから作られている伝統的な住宅であることから、中には新築後50年以上が経過している建物も少なくはありません。
築年数が経過している長屋の場合は現代の耐震基準を満たしていない可能性もあります。
このような長屋は耐震工事を行う必要がありますが、長屋の切り離し工事を行うことで耐震性への懸念も払拭することができます。
長屋を切り離すことで生じるデメリットは以下の通りです。
それぞれのデメリットについて詳しく解説します。
長屋を切り離す際は共有部分の壁や基礎工事を一から行う必要があるため、場合によっては建て替え工事よりも費用が高額になることもあります。
また、切り離し工事によって建物の耐震性が失われた場合は耐震工事も行わなくてはならないため、追加費用が発生する可能性もあります。
もともと共有していた壁を壊しそれぞれの家に壁を新設するとなると、以前の居住スペースよりも切り離し後の方が狭くなってしまいます。
また、家の前の道路幅によっては建物を後退させる必要性があります。
あらかじめ今現在よりも建物の居住スペースが少なくなっても問題はないのか、慎重に検討しておくようにしましょう。
この章では、長屋を切り離す際の事前準備と注意点を紹介します。
まずは長屋の切り離し工事を行う際の業者選定を行います。
長屋の切り離し工事は切り離し解体とも呼ばれ、先述したとおり高度な技術力が必要な解体工事です。
そのため、どのような解体業者でもいいというわけでなく、過去に長屋の切り離し工事を請け負った経験のある業者や切り離し解体を得意とする業者に依頼を行う方が安心です。
あらかじめ業者の評判や口コミをチェックし、解体工事の際に出た廃材の買取をしてくれるかどうかも確認しておくと良いでしょう。
長屋の切り離し工事を行う際は、長屋の所有者全てからあらかじめ切り離しの許可を得る必要があります。
所有者の一人が許可をしていないのにもかかわらず無理矢理切り離し工事を行うと、区分所有法に触れてしまい、最悪の場合大きなトラブルに発展してしまうこともあります。
そのため、必ず所有者全員から確実に許可をとるようにしましょう。
区分所有法とは、建物の共有部分に関する施工を行う際は必ず所有者に許可を取らなければならない規定のようなものを指しています。
共有部分の取り壊しを行う際は所有者の三分の一以上の承諾を得た上で行わなくてはならず、もしも満たされていない場合は法律違反となることもあります。
長屋の切り離し工事を行う際、どれくらいの費用がかかるのか、どの日程で施工を行うのかどうかを建物の所有者と話し合い、あらかじめ説明を行う必要があります。
基本的には切り離し工事の提案者が工事費用を負担しますが、提案者以外にも切り離し工事を希望されている方がいる場合は、費用を半額ずつ出し合うのも一つの方法です。
また、これらの説明については施主だけでなく解体業者が請け負ってくれるケースも多いため、あらかじめ業者側に説明の有無について確認しておくのも良いでしょう。
長屋の切り離し工事を行う際は、共有部分の壁がある部屋は工事の間は立ち入り禁止となります。
そのため、壁の取り壊しや新設にどれくらいの日数を要するのかあらかじめ業者に確認しておき、隣住民との都合のいいスケジュールを合わせておきましょう。
また、工事の際は騒音トラブルが起きる可能性もあるため、対策や解体工事の時間帯が順守されているかなどを施主として用心深く確認しておきましょう。
切り離し工事が完了したら、物件を引き渡して施工終了となります。
万が一施工の際にトラブルが発生した場合や完成した建物に不備がある場合は、すぐに施工業者にその旨を伝えて補修工事を行いましょう。
一般的には施工中についた傷や業者によるミスが原因で起こる不備の場合の補修費用は保証されるため、施工後は念入りにチェックすることが大切です。
長屋の切り離しを行う際は、さまざまなトラブルが起こりえる危険性もあります。
この章では、長屋の切り離しを行う際に起こるトラブルの例を紹介します。
長屋の切り離し工事を行う際は所有者の許可をもらう必要がありますが、場合によっては所有者全員からの許可をもらう事ができないケースもあります。
また、実際に許可を得たのにもかかわらず後から反対をされることもあります。
長屋の切り離しを行う際は近隣住民との関係性を日頃から保っておくこと、施工を行う際に丁寧な説明を行うことが近隣の方々の理解を得るための近道になります。
専門の弁護士を間に挟み話し合いを重ねるのも一つの手段ですが、相手から見た印象が悪くなってしまうことが多いため、できるだけ直接やりとりを行うのが望ましいでしょう。
長屋の構造上、切り離しが困難なケースもごく稀に見られます。
切り離しが困難であると判断された場合、解体工事の期間が長くなったり費用が高額になるため、建物の他の所有者から切り離しを断られることもあるでしょう。
建物の構造を把握した上で切り離し工事が行えるか判断することになるので、まずは現地見積もりを依頼して問題なく工事を進める事ができるかどうかを確かめておきましょう。
共有部分の壁は新設工事が必要ですが、使用する素材や金銭面でなかなか話がまとまらずにトラブルに発展してしまうケースも多くあります。
使用する壁の素材にはさまざまな種類があり、メリットやデメリット、金額も異なることから、近隣住民との間にトラブルが発生する可能性も高くなります。
切り離し工事に着手した後に、騒音や粉塵、施工不良による雨漏りなどでクレームが入るケースも多くあります。
このようなクレームが途中で入ってしまった場合、施行中であれば途中で施工が止められてしまうこともあります。
そのため、騒音や粉塵に関する対策はしっかりと決めておくことが大切です。
長屋の切り離しを行う際は、いくつかの注意点に気をつけて施工を行う必要があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
長屋の切り離しを行う際は、事前の家屋調査が最も重要です。
建物には残しておくべき重要な柱とそうでない柱がありますが、もしも重要な柱を施行中に傷つけてしまうと建物全体の寿命にも大きく関わってしまいます。
このようなトラブルは近隣住民との争いの原因となることもあるため、事前に家屋調査を行っておき、もしもその後トラブルに発展した場合は証拠として扱うようにしましょう。
また、解体工事後に補修工事を行わなくてはいけない箇所を事前に調べておくことも大切です。
所有者への説明不足は大きなトラブルのもとになる大きな要素です。
施工許可を取ることはもちろんですが、施工日程や施工内容、費用面での話し合いなど、しっかりと両者が納得できるまで説明を重ね、理解を得るように努めましょう。
不安であれば、書面で説明したことを証明できるような書類を作成しておきましょう。
このような書類は、万が一のトラブルの際に証拠として使用することができます。
補修工事を行う場合、基本的に施主が補修費用を負担します。
近隣住民との関係性などにより費用が割り勘になることもあるようですが、基本的には全額施主負担であることを覚えておきましょう。
長屋の切り離し工事を行った後の補修工事は、施主側で補修工事を行う必要があります。
補修工事の内容に関しては切り離しを行う前と同程度の補修が必要です。
そのためには事前に家屋調査を行い、今現在の建物の状況や使用する材質などを把握しておくと、後々トラブルに発展するリスクを最小限に止める事ができるでしょう。
長屋の切り離し工事を行った後は、切り離しをした側の建物の耐震強度が落ちてしまうこともあります。
このような場合は耐震工事を行う必要がありますが、この費用についても施主が費用を負担することが一般的です。
そのため、事前に切り離し工事の費用だけでなく、補修工事の費用も想定しておくと予算を組みやすくなるでしょう。
切り離し後の補修工事で使用する材質にはトタンやモルタル、サイディングなどさまざまな素材から外壁に合うものを選定します。
これらの素材にはメリットやデメリットが存在するため、それぞれの材質の特性や違いについてあらかじめ把握しておくようにしましょう。
必要であれば、所有者と素材を決める際に何を一番に優先するのか、情報を共有しながら話し合いを進めていくとスムーズにまとまります。
長屋の切り離し工事を依頼する業者を選ぶ際は、いくつかの重要なポイントがあります。
これらのポイントをしっかりと抑え、失敗しない業者選びを心がけましょう。
業者選びの際の重要ポイントを紹介します。
まずは複数の業者に見積もり依頼を行い、内容や価格をしっかりと比較して自分にあった業者選びを行います。
見積もりを行う際は全ての業者に同じ施工内容で見積もり依頼を行い、同じ条件下で比較する事が重要です。
業者によっては取り扱っている材質の違いや工法の違いもあるため、その中で最も良い内容の御意者を選ぶことが大切です。
解体業者の対応が丁寧かどうかという点も、業者選びの際の重要ポイントです。
業者側の対応が悪いと近隣住民からの解体工事の許可を得る事ができなかったり、施工そのものがずさんである可能性も十分に考えられるでしょう。
そのため、問い合わせから見積もり依頼、打ち合わせの段階で少しでも対応に不信感を抱いた場合は、他の業者に依頼をした方が良いでしょう。
また、施主に丁寧な対応をしていても近隣住民に対して雑な対応をすることも考えられます。
トラブルが起きてしまうリスクをなるべく減らすためにも、施工関係者には平等に丁寧な対応をしてくれる業者を選びましょう。
長屋の切り離し工事には、高度な技術が必要不可欠です。
そのため、初めて長屋の切り離し工事を請け負う業者ではなく、切り離し工事を得意としている業者や長屋の切り離し工事の実績が豊富な業者に依頼を行うようにしましょう。
施工業者のホームページなどから実績の確認ができない場合は、施工業者に実績を直接確認してみることも一つの方法です。
その際は実際の写真なども見せてもらうと仕上がりのイメージがしやすく、失敗につながりにくくなるでしょう。
解体業者が行う施工は、長屋の切り離し工事のみです。
その後の補修工事に関しては解体業者が契約している大工や工務店が行うため、こちらも信頼できる業者と契約をしている解体業者を選ぶ事が大切です。
大工や工務店がどのような業者であるのか確認する際は、見積もり依頼を行う際に補修工事を行う業者はどのような業者であるのかを尋ねてみると良いでしょう。
また、大工や工務店の口コミなども合わせて事前に確認しておくとより安心です。
長屋の切り離し工事は複雑な手順も多く、施工業者の技量が大きな鍵となります。
また、施工を行う際は長屋の切り離しについてのメリット・デメリットを事前にしっかりと把握しておくことが最も重要です。
建物の所有者に対してもメリットやデメリットを説明することでトラブルへの回避に繋がるため、まずは事前の情報収集を丁寧に行うようにしましょう。
見積もりを行う際は、一括見積もりサービスなどを活用することによりそれぞれの業者に連絡をする手間を省くことも可能です。
失敗しない切り離し工事を行うために慎重な業者選びを心がけましょう。
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